2008年に実際オーストリアであった凶悪監禁事件をモチーフにした小説原作の、衝撃と感動のサスペンス・ヒューマンドラマ。
母と子の絆に思わず涙でした。
薄汚れた小さな"部屋"で暮らす母ジョイと、その子どもで5歳の誕生日を迎えたジャック。
この"部屋"で生まれ育ったジャックにとって、ここが世界の全て。
自分と母と、たまに訪れる謎の男しか生きている人間を知らない。"部屋"の外のことは一切知らない。
奇妙で異様な空間の中、無垢なジャックの想像力がどこまでも純粋で、初めて知った外の世界には新鮮な驚きや溢れる好奇心に満ちていて、こちらも観ていてハッとさせられました。
一方、元の世界へ戻ったジョイ。時間が止まったままになっていた自分の部屋。あの日の続きには帰れるはずもなく、奪われた人生の悔しさや悲惨さ、現実の非情さに愕然。
前半サスペンスフルな展開が繰り広げられ、恐ろしい事件の残酷さは観ていて切なくて苦しいのに、あくまでも母と子の愛情ドラマとして描かれているのが秀逸で、ラストはジャックとジョイへの温かい感情とともに、複雑で深い余韻に浸されました。
厳然たる事実として、失った時間はもう取り戻せないし、ジャックが出生の真実を知る日が必ず来る。
でも、きっとまたお互いの存在がお互いを強くしてくれるはず。
この2人なら、辛くて厳しけど自由で美しい"世界"を受け入れ、助け合って生きていけるはず。そう願わずにはいられない。
一味違ったハートフルさが心を打つ、見応えのある作品でした。
★小さな"部屋"で5歳の誕生日を迎えた主人公ジャック。母は息子の未来を案じ、この"部屋"と"世界"の真実を伝える。
外の世界へ脱出するため、母が命懸けでジャックに託した計画は、果たして成功するのか?そしてその先の"世界"とは、、?