半兵衛

激突!合気道の半兵衛のレビュー・感想・評価

激突!合気道(1975年製作の映画)
2.5
合気道の創始者植芝盛平が合気道を完成させるまでを描いたドラマではあるが、尺が短いので色々とはしょりまくっているためか気づいたらいつの間にか修行を終えて独立していたというあっけないものに。それでいてアクションはふんだんに盛り込んでいるという、この当時ならではの東映プログラムピクチャーらしい過剰な作風に仕上がっている。

ただ合気道はその技術の特徴ゆえ激しいアクションになりにくくて何だか無理をしている感が強いし、そのうえ主役にスターのオーラが無いため画として全く生えていないのがきつい。確かにアクションのスピードは凄いけれど、こういう商業映画で華やかさに欠けるというのは致命的かも。

そのうえ主役をサポートせんと兄貴の千葉真一やJAC(ジャパンアクションクラブ)で二人から修行を受けた志穂美悦子が出演しているが、彼らのアクションが華麗かつ派手だし二人ともスターのオーラを存分に放っているので逆に主役を喰ってしまっているという悲しい事態に。終盤はもはや千葉治郎は脇役のような存在に。

無理矢理恋ばなをつけようと植芝を慕うも彼が既婚者と知り身を引くというメロドラマもあまりにもベタすぎて(そのうえ小沢監督が女性を描けない作家なので)心に響かないし、出口王仁三郎という美味しいキャラクターを全く生かさないまま単なる脇役として処理してしまう展開も酷い。出口と植芝は満州に行くもそこで馬賊に捕まり殺されそうになるなど面白そうなエピソードが沢山あるのに何でそこを省略したのか…。

でも一番致命的なのは序盤の北海道パートで舞台となる開拓村の全景を撮らず、いかにもセットですという感じで効率的に撮影しているところ。ジョン・フォードまでとはいかなくても、『田吾作ロイド一番槍』のように村と自然が接している雄大なショットがあることで映画にリアリティが生まれるし何よりパワーのある画となって作品に活力をもたらすのに。

あと終盤繰り広げられるアクションの舞台はもしかしたら『吸血鬼ゴケミドロ』で飛行機が墜落したところと同一の場所では、地面や崖の具合がかなり似ているような。
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