うるる

ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますのうるるのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

意訳ではありますが、
「私たち、白人と黒人の結婚が反対されていた州が多いころから、ふたりで乗り越えてきたじゃない!」と言うルースのセリフがとても素敵でした。

過去の栄光ばかりに縋るのはどうかという風潮であったり、何かあるとすぐハラスメントに繋がる時代(個人的にどんな種類のハラスメントも断固反対派です)ではありますが、"過去の自分たち"が頑張ってきたからこそ、"いまの自分たち"の背中を押してくれる流れが心に染みました。

若かりしふたりの出会いから心惹かれ合う場面、「普通ってなに?」という提起、人種の壁を経ての結婚問題、子どもが出来ないことへの苛立ち、実際の子どもがいないからこそルースは愛犬ドロシーへの愛を無償に捧げ、同時に、ドロシーをプレゼントした日を思い起こしたからこそ心の転換をはかるアレックス。

長年連れ添っているからこそケンカも仲直りの術も知るご夫婦に、美しさと羨ましさを感じました。

アレックスやルースのみならず、リリー、内覧会に訪れたメンバー、事件の犯人などキャラクターがなかなかに多いなか、たくさんの問題が詰め込まれていた印象。

家を売った経験は無いのですが、たしかに、自分が大事にしていた場所を無意識に言葉で抉られるのはつらいなぁと、アレックスの絵画を通じてよく描写されていた箇所はなかなかにつらかったです。

アレックスとルースが家の場所を変えなかったあの家に、ゾーイちゃんが遊びにきてくれるといいなぁ。

もちろん、仕事に邁進してくれたリリーには申し訳ありませんが… アレックスとルースとドロシーが今後も、納得のいくまでブルックリンのあの部屋で暮らして欲しいと願ってやみません。

しいていうならば…ヘルニアを患ったドロシーを散歩から家に帰るときには抱っこしてあげられないのだろうか、と思ってしまったのは、私自身が犬を飼っていた経験があるからでしょうか…。


街の変化は止まらないけれど、過去の記憶も決意も、未来への希望も捨てない、とても愛に溢れるご夫婦のお話でした。

ブルックリン、もしくはニューヨークに、住みたくなりますね!
うるる

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