ボブおじさん

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男のボブおじさんのレビュー・感想・評価

4.2
〝ハリウッド10〟とは、1947年アメリカの下院非米活動委員会に喚問され証言を拒否し、後に議会侮辱罪で投獄されてハリウッドを追放された10人の映画人のことだ。

同委員会はハリウッドを標的にすることで冷戦下の赤狩りの風潮を全米に拡げる効果を狙ったとされる。表現の自由をめぐって制作者から俳優までハリウッド全体を巻き込んだこの事件は,アメリカ映画界に大きな傷を残した。いや、はっきり汚点と言ってもいいだろう。

その10人の中で最も有名な1人ドルトン・トランボの波乱と苦難に満ちた半生が、彼が脚本を書いた名作の映像と共に描かれる。

釈放後、ハリウッドでの居場所を失ったトランボは、自分の名前で仕事が出来ず、他人の名前や偽名で書かざるをえなかった。だが、実力は一級でその作品は、アカデミー賞の原案賞を2度も受賞しながら、他人の名前で書いた為、自分が受賞することができなかった。

「ローマの休日」「黒い牡牛」「スパルタカス」「栄光への脱出」「いそしぎ」「ジョニーは戦場へ行った」「パピヨン」など作品名は知っていても、トランボの名前は知らない人が多いのではないか。

逆境に立たされながらも信念を持って生きたトランボの映画への熱い思いと、そんな彼を支え続けた家族や映画関係者らの真実を描き出す。

劇中に登場する実在の有名俳優や監督は、本人の特徴をよく捉えており、本人を知っている人は、より楽しむことができるだろう。

また、誰もが知るあの有名作品の創作過程や裏話なども知ることができるので、映画ファンには堪らない作品だ。この映画を見た後に、彼が書いた作品を改めて見てみると、きっと違うものが見えてくると思う。

そんなハリウッドの光と影を味わい尽くしたトランボがラストに語るスピーチが心に染みる。エンドロールまでしっかりと見てほしい作品だ。


公開時に劇場で鑑賞した映画をBSプレミアムで再視聴。



〈余談ですが〉
◆フランク・ダラボン監督でジム・キャリーが主演した「マジェスティック」という映画も、この時代の脚本家の数奇な人生をファンタジックに描いた作品だ。もちろんフィクションであるが、トランボらの受けた仕打ちが、下敷きになっていて、理不尽な赤狩りについても痛烈に描いてもいる。

◆あなたの大好きな映画を3本教えて😊
じゃその映画の監督と主演俳優は?
なるほど、ところでその映画の脚本家は?

映画にとって脚本の重要性は多くの人が認めているのに、監督や役者ほどには記憶に残らない。もちろん私も例外ではない😅

表に出てくる監督や俳優と違い、脚本家は自宅に籠り表に出る事はほとんどない。ある意味トランボがゴーストライターとして仕事ができたのも脚本家だから成立した話なのだ。もし彼が監督だったら、例え裏でも仕事は出来なかっただろう。

だとすれば、あの「ローマの休日」も生まれてなかったことになる。

ところでこの映画の脚本誰だっけ?