あでぃくしょんBBA

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男のあでぃくしょんBBAのレビュー・感想・評価

4.0
2024.01.12 配信で視聴

ハリウッドの赤狩りを、知識として知りたくて観た。
タイトルがタイトルだけに、政争寄りの小難しい作品ではないかと構えたが、全体の緊張感は高いものの、トランボと家族、仲間、対立者群を時系列で描き出す、比較的静かな映画だった。
“静か”と言っても、当時のニュース映像や実際の映画作品が挿入されていること、トランボの協力者や、真逆の対立者の中に実在した著名な政治家や俳優が出てくることとで全く飽きない。
鑑賞後には「いいドラマを観た」満足感があった。

ただ、共産党員は共産党員でも、トランボは、ソヴィエトや当時の中華人民共和国、また当時の日本共産党(徳田球一時代)とは生活や主張にずいぶん違いがあって、そこに驚かされた。
世界同時革命や武装闘争を唱えるでもなく、私有財産を否定しない(レッドパージされる前は、自身が知的富裕階級にふさわしい私有財産を保有していた)。いわゆるお金持ちとも友好関係を保っている。
また、「国家のために駆り出される戦争の、個人にもたらす悲惨」をテーマにした小説や、小説の翻案で「ブルジョア男に翻弄される女の悲恋」脚本を書いているが、現代の目から見ると、(主張はあるが)特別に政治性が強いとは思えない。
彼は、共産主義者・社会主義者というより、単にフェアを指向するリベラリストだったのではないか。たまたま?の所属(アメリカ共産党党員)とハリウッド映画産業内における労働運動の精神的支柱の1人だったことが、冷戦当時のアメリカと、もっと儲けたい映画人に相当マズかったのだろう。
(映画や出版関係の赤狩りはまだマシなほう(真綿で首絞め方式)で、自動車メーカーの労組ではマフィアが絡んで労組役員を次々に殺害、なんてこともあったそうな)
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