すず

アンジェリカの微笑みのすずのネタバレレビュー・内容・結末

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

〝踊れ〟
〝目も眩む高さで 不変に瞬く星たちよ〟
〝讃え そして逃げよ 一瞬でも〟
〝繋がれた道から〟
〝時よ とどまれ〟
〝汝 いにしえより〟
〝天の幻の道をさまよう者なり〟
〝天使たちよ〟
〝天国の門を開け 我が夜に昼あり〟
〝我が身に神あり〟

趣味の写真が高じて、ユダヤ人の青年イザクは、町の有力者の娘アンジェリカの死に際して、急を要した写真撮影の依頼を受ける。真夜中に邸宅に出向き、美しく着飾られた 横たわるアンジェリカの亡骸を撮影していると、レンズ越しの彼女は目を見開きイザクに優しく微笑みかける…。

結婚したばかりで、若くして亡くなったアンジェリカ。彼女の夫は悲嘆に暮れている。切なく 甘美的に響くピアノの旋律と、シンプルな画の構図が美しい。

宇宙と地上と、エネルギーと物質と魂について語る下宿の老人たち。

肉体と魂、生と死、神秘なる宇宙の法則と神の国。撮影当時オリヴェイラ監督は101歳!?なるほどな。

アンジェリカの幻を追い求めるイザク。そして、籠の鳥は自由に空を舞うために肉体を捨て去るのか。

死は終わりではなく新たなはじまり。
 
さまざまな解釈を楽しめる、ロマンチックで内証的な作品だと思う。監督の聡明さと気品と信仰心、映画への飽くなき情熱が伺える。そして監督が自分自身に向けた餞のようにも感じる。

例えば、運命の行き違いがあったとして、〝肉体と魂の解放〟即ち〝死〟をもってふたり 天の門を叩くことを神の思し召しとする運命があっても、映画的には実に美しいわけで。何度も見返せるなぁ。映画だからこそ美しいんだよな、こういうものは。
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