chaooon

ナショナル・シアター・ライヴ 2016「戦火の馬」のchaooonのレビュー・感想・評価

4.4
前から気になっていたNTL作品をアンコール上映で鑑賞✨

予習で観たスピルバーグの映画版と基本の物語は一緒だったけど、登場人物の相関関係とか微妙な設定が異なっていたし、雰囲気も全く違ったので新鮮な気持ちで楽しめた!

本編以外にも、プロデューサーと原作者の登壇インタビューや、製作裏の映像もあり、かなり見応えたっぷり内容✨
戦場において、どの立場でもない"中立な立場"であり、フラットな目線で観ることができる”馬”という存在を主人公に据えた、という原作者のお話は、なるほどなと✨

今作何より素晴らしいのは、やはり馬や動物たちのパペット🐎✨✨
造形自体はいかにも作り物を感じるハリボテ感なのに、その躍動感や息遣いはホントに生きてるみたい✨

人形師3〜4人がかりで動かす全ての動きは、もう馬そのもの!!
「隠すのではなく見せびらかせたい」という言葉の通り、馬に寄り添うように、人形使いたちが馬を動かし、そして彼らの表情もリンクするように全身で馬になりきっているのは芸術性すら感じるパフォーマンス!
いやあ、凄い✨✨
人形師や中身が見える構造だから、繊細で脆そうな作りかと思いきや、しっかり人が跨がって舞台上を走り抜けるから、迫力も凄い👏🏻✨✨

映画は戦場のシーンや馬たちの描写は写実的で、シリアスな印象に寄っていたけど、こちらは舞台セットや小物等、舞台に置かれる物は最小限でかなりシンプル✨
柵などもキャストが持って支えている形で、馬と同様、見せる仕様!
ユーモアを感じる、フッっと気持ちを抜ける演出や皮肉の効いたセリフもあって、長時間でも重過ぎず観れたかな✨

舞台上の要素が少ない分、パペットを含めた演じ手の動きやセリフが研ぎ澄まされているのを感じる✨
観る側も観るべき部分に集中できるし、その一つ一つの動きがとてもエモいんだよね✨✨
馬のジョーイが仔馬から大人に成長するシーンや、ラストシーンはグッと来る🥺✨✨

物語の進行を担う、民謡のような歌やライティングで牧歌的な雰囲気が舞台上に常に漂う。
NTL観てるとミュージカル作品じゃなくても、割と高確率で歌い手さんが出てきて、歌で世界観を演出してる印象🤔✨
今回は歌の回数も多かったのもあり、この奇跡のような物語が、まるで吟遊詩人が語る英雄の物語のようにも感じたなぁ✨✨

戦争の始まりと終わりを告げる鐘の音のタイミングも絶妙🔔🥺

スケッチブックの一部を破り取り、ジョーイの絵を肌身離さず持つ主人公。
その破り取られた紙をモチーフにしたスクリーンが舞台の上に常に配置されているのが素敵。
セットのないシンプルな舞台上に、彩と深みを与えるスクリーンの映像がまた効果的だったなぁ✨✨
美術担当の方のインタビューにもあったけど、紙の切れ端にも見えれば、雲や馬の尻尾にも見えるような抽象的な形は、想像力を掻き立てるこの舞台の象徴的な描き方そのもののを形作っていて、凄くしっくりときた✨✨

映画のラストは結構説明的な感じがあったけど、こちらはラストも究極にシンプル✨
言葉や説明はなくして、ただ舞台上の彼らの姿が全てを物語っていて、ダイレクトに心に響いた✨✨
chaooon

chaooon