井出

フル・コンタクトの井出のネタバレレビュー・内容・結末

フル・コンタクト(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

3段階に分かれているらしい。機械の目を通し、機械で殺すやり方。自分の目で捉え銃で殺すやり方。対面し、殴りあうやり方。一段階目では、無感情で、全て、何かを通して遠くから見ている。二段階目は目で見ていて、ある程度見られている。三段階目はお互いを見合いながら、痛みを分かち合いながら、殴りあう。どれがいいんだろう、一概には言えない。どれが辛いんだろう、それも分からない。パートナーはどの段階がより愛おしく感じるのだろう、これもまた分からない。でも、三段階目の方がより感情的で、生きているって感じがする、この感覚が、きっと真実なんだと思う。しかしどれも、人間らしい気もしなくもない。どの段階でも苦悩し、そして、誰かと愛し合わざるをえない。これも普遍的な真実なのではないか。様々に解釈できるし、これがこの作品の演出と演技による余白だと思う。
アメリカとイスラムの対立を、ヨーロッパの目線から見ているという側面も面白いだろう。ロケ地のクロアチアも美しい。
段階で視点と身体が異なるものの、私たちの視点は変わらず、遠い。しかし、最後彼と対峙したとき、私たちは自分たちの視点がぐっと引き寄せられるのかもしれない。私たちは見ることで存在たらしめ、見られることで存在となる。
井出

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