みりお

帰ってきたヒトラーのみりおのネタバレレビュー・内容・結末

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

※仕事がバタバタでレビュー溜め込みすぎたため、コメントお返しできないと思われます…どうかスルーをお願いします🙇‍♀️🙇‍♂️🙇



ドイツの作家ティムール・ヴェルメシュが2012年に発表した風刺小説を映画化した作品。
ほんとーーーーーに面白くて食い入るように観てしまい、そしてラストシーンで背筋がゾワっとする秀逸な作品でした✨

歴史上の事件としてナチスの所業を見ると、それは紛れもなく悪魔の所業。
ヒトラーの言葉に民衆が歓喜し、笑顔で彼を崇拝する映像を観ると、「なぜあんな奴を支持したのだろう」と常々違和感があった。
貧しく辛い時代だと、彼のような人に救いを求めてしまうのかしら…と考えあぐねてみたり、外国人労働者が急激に増えている現代日本の状況から置き換えて想像してみたり…
でもやはりなぜあのような所業が罷り通ったのかが、どうしてもわからない。
けれどこの作品を観ると、当時のドイツの人々の歓喜・期待を体験できたような気持ちになったから驚き👀

とりあえず序盤のヒトラーは、(一番彼に似合わない形容詞を使うけれど、)本当にチャーミング💓
現代の技術や社会の仕組みを理解できなくても物おじせず、あらゆることに猪突猛進。
純真無垢な瞳で学び、旅をし、絵を描いてお金を稼ぐ様に、どんどん愛おしささえ覚えていく。
しかし視聴者がヒトラーを好きになりかけたところで起こる、ユダヤ人老婆のものすごい剣幕での一場面。
これを観てハッとさせられた。
あれほどの虐殺を行ったヒトラーに魅了されていた自分の愚かさと、やはり人を虜にすることに長けているヒトラーの魅力とに、心底怖くなった💦

そして終盤の展開は、もはや恐怖映像🥶
尊敬すべきアイコンとして認められ、街を歩けば誰しもが彼に手を振り、写真を求める。
笑顔でそれに応えるヒトラーはなんとも優雅で素敵で…
しかしヒトラーは、その全てを「プロパガンダのひとつ」として行っているに過ぎず、彼の危険性に気付いたマイノリティには、耳元でこう囁く。
「それなら怪物を選んだ人間を恨め。彼らの本質は私と同じだ。私は人々の一部なのだ」

この言葉は本質を突いていると実感させる仕掛けが本作にはある。
それは、ヒトラーが冒頭に街の人々にインタビューし、主に移民への不満をぶちまける人々の映像は、台本などなく本当にゲリラ的に撮影した映像、というもの。
街の人々には1940年代も今も、変わらない不満が渦巻いている。
それを「口に出していいんだよ」と語るカリスマ的な指導者が現れたら、瞬く間に世界は同じ歴史を繰り返すんだろう。
ヒトラーは引き金でしかなく、あの戦争と大虐殺を引き起こしたのは、ナチスでもヒトラーでもなく、その時代に生きていた人々なのだと、現実を突きつけられて、作品は終わりを迎える。

この展開が、ほんっとーーーーーーーに怖い!!
でも同時に1930〜40年代のあの狂ったドイツを追体験したかのような映画体験に心弾み(不適切な言葉ですみません)、自身もあの時代に生きていたらヒトラーのようなチャーミングで権威ある人物に心酔していたのでは?と、ふと納得感を感じてしまう作品になっていた✨
これはいつか子供ができたら観せたい作品だなぁ


【ストーリー】

ナチス・ドイツを率いて世界を震撼させた独裁者アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)が、現代によみがえる。
非常識なものまね芸人だと人々に勘違いされ、テレビマンにスカウトされてテレビに出演し、何かに取りつかれたような気迫に満ちた演説を繰り出す彼を観るうちに、視聴者はヒトラーに魅了されていく。


【キャスト】

*ヒトラー:オリヴァー・マスッチ
ドイツ出身🇩🇪
舞台俳優として1980年代から活動し、1990年代からTVドラマ、2000年代から映画にも出演するが、鳴かず飛ばず…かなり長い間俳優として成功していなかったようですが、2015年の本作のヒトラー役で一躍有名人に!
本作以降は主役級の役を演じることが多くなったようです。
なんと『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)にも出てたようだけど、どの役だろう…🤔?
今年は、命をかけてナチスに抗議した書として世界的ベストセラーとなった、オーストリアの作家の「チェスの話」を映画化した『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』の主役も演じているようで、それも楽しみ🥰
みりお

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