空海花

インスマスを覆う影の空海花のレビュー・感想・評価

インスマスを覆う影(1992年製作の映画)
3.6
H・P・ラヴクラフト著『インスマウスの影』または『インスマスを覆う影』
“The Shadow Over Innsmouth”を
日本を舞台に翻案したTBSのドラマ。

佐野史郎がTBS関係者とどうすればこの原作を映像化できるかと話が盛り上がり
企画が通ってしまったというから驚き。
彼が千葉県、南房総を訪れた際に
魚料理の生臭さにインスマスを連想した体験がきっかけになったとか。
佐野さんはかなりのラヴクラフトフリークだそうで、そんなことでインスマスを思い出すなんて…尊敬します(笑)
脚本は小中千昭
演出は若狭新一
低予算で、怖いグロいはないのだけれど
特殊メイクや色、音で気持ち悪い世界観を演出している。

日本的怪奇物との相性はこんなに良かったのかと驚きを禁じ得ない。
昼の気怠さと生気のない感じの悪さと
夜のジメジメと満ちてくる不気味さ。
配役はなかなか豪華で、演技も良い。
ストーリーは変えられているものの
妖しい美女の真行寺君枝や河合美智子が出てくることで和怪奇のエロティシズムが来るかと思ったがそれはなく
確かにエロは似合わないので嬉しい。
主演佐野史郎が世界観を完全に理解しているからか、すごく胡散臭くなりそうな空気を一掃する。

駅名標などで、お馴染みの土地を見つけることができる。
蔭洲升→インスマス
赤牟(あかむ)→アーカム
王港(おうみなと)→キングスポート
壇宇(だんう)→ダンウィッチ

郷土館の館長は『ネクロノミコン』を読み
住民たちの信仰は陀金(ダゴン)様…
海の向こうに見えるシーンは雰囲気抜群。私的にクライマックス。
こうして話に引きずり込まれていく。
カーステレオからは「黒く塗れ!」が♪

人間は物語を持たないと生きてはいけない。
物語は幻想。
人生とは幻想。そして…

ラストの演出とペンネーム
佐野史郎の変貌、斎藤洋介さんの表情が
見事に締め括っていた👏

哀悼 斎藤洋介さん🙏


2021レビュー#093
2021鑑賞No.150


最終日ギリギリにこのレア作品を知り、すぐさま夜中に鑑賞しました。
ねこ無双さん、ありがとうございます✨
空海花

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