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無法者の掟のBONのレビュー・感想・評価

無法者の掟(1948年製作の映画)
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イタリア映画は奥が深い…。現在でも世界に名を馳せるイタリアの巨匠たちの作品をしらみつぶしに鑑賞していただだけで、イタリア映画の上澄みだけをすくっていただけだったのだなと気付き、更に映画の世界が拡張された。

本作の原作はシチリア元判事の手記を基とし、若きフェリーニなど6人の脚本家によって合作されたシチリア島を舞台にした奇妙な西部劇。

マフィアに支配され独自の法を持ち、腐敗したシチリア島の小さな町に、正義感に燃える裁判官グイドが派遣され、 法の名の下に悪習を打ち砕こうとする物語。

村で不信感と敵意をもって迎えられた裁判官のグイド。殺人が起き、町の住人たちは犯人が分かっていてもマフィアを恐れて口を開こうとしない。そして唯一の理解者の青年パオリーノ。主演の正義感の塊のような裁判官役はイタリア映画界を代表するマッシモ・ジロッティ。

荒涼とした不毛の土地の景観、腹を空かせた農民の反乱、領主と結託したギャングの卑劣さなど、シチリアと西部劇が要素を混ぜ合わせた音楽や映像の演出などがモノクロームでも暑さと湿度を感じた。

裁判官が正義を引っ下げて奔走する中での困難や、人妻の禁断恋愛の香りの要素などが含まれ全く古臭い感じがしなかったたものの、シチリアを舞台としたマフィア映画は大体クラシコイタリアのような小洒落たスーツと太巻きタバコをくわえる渋い男のイメージだったので大分泥臭く人間味を感じた。

ラストシーンのグイドのなんと説得力のある言葉なことか。道徳性を失った人々の雷に打たれたような顔つき。

馬の手綱を引いて土埃の舞う土地を駆け抜ける…。ドコドコドコと駆けていって乗馬してみたくなった。
BON

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