MikiMickle

パーティで女の子に話しかけるにはのMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.8
舞台は1977年のイギリス
パンク好きだが、童貞引っ込み思案奥手のエン(アレックス・シャープ)は友人2人とつるみ、青春を謳歌していた。
居場所もなく、パンク好きでもそこでも排除されるような不甲斐ない日々だけれど、パンクにしか拠り所がなかったし、心底愛していた。
そんな時、ふと入ったパーティー会場で、彼は恋に落ちる。ザンという女性に。
しかし、彼女は実は宇宙人で、あと48時間後には地球を去る。
その48時間の中で2人が見つけるものとは……

というかなり変わった設定のこの映画。

まず、パンク好きとしては、エンの部屋からテンションあがる‼ 壁中にパンクの嵐‼ ピストルズ・ダムド・ラモーンズ・エディアンドホッドロッツのジャケットが飾ってあり、壁1面にイギーポップのライブイラストも‼ レコードで聴く曲はダムドの「ニューローズ」が流れる‼ もう、スローモーションで見ちゃった♡

男3人が忍び込んだライブハウスでは友達のディスコーズというバンドが演奏し(後のアメリカの“ディスコード レコード”を連想される名前である)、マルコムマクラーレン風な人が現れたり、パンク姉御なボディーシーアはニナ・ハーゲンを意識したような人でその会話がなされるなど、当時の場末のイギリスパンクシーンを垣間見れるような情景に「この時代にここで青春をおくりたかったな」という憧れを感じたりもする。

エンはvirysという同人誌を作り、ウィルスボーイというキャラによって自分の鬱憤をイラストで表していて、そのピュアさがとてつもなく愛おしい。

宇宙人であるザンを演じるエル・ファニングの可愛らしさも半端ない。
「パンクを見せて」とエンに伝える彼女だが、そもそもそれは服を切り刻もうとしている真っ只中で、彼女が本質的に反骨精神を持っている現れでもあったり。


そして、何故、宇宙人と恋に落ちるという設定にしたのか…それを考えた…

いくら時代の流れがあったとしても、パンクシーンはやはり一般的に見たらエイリアンだったのかもしれない。異質なもの。
同士である“地球外エイリアン”と“地球内エイリアン”の、純粋で楽しい、全てが初めての体験のキラキラときめく描写は胸がキュンとなって仕方がない。 監督のジョン・キャメロン・ミッチェルは、同じくジェンダー的に“地球内エイリアン”を実感して生きてきた人だ。だからこそ、その見せ方が上手い……

という反面、めちゃくちゃ変な映画で、グッと泣きそうになる直後に変なのがきて、色々と考えてたのを全部忘れさせられる(笑)
あぁ、そうだな。パンクは考えるな感じろだな。兎にも角にも変な映画だった。ぶっ飛びすぎな奇妙奇天烈。それを楽しむ事もいっぱい出来る。でも、全くもって、それだけではない。

なにはともあれ、あの時代のイギリスを「もっとカラフルだと思っていた… でも宝石みたい」と語るザンの姿は印象的だった。荒廃して寂れたイギリスの片田舎でみつけた宝石……
ラストは涙が怒涛のようにこみ上げてしまった。素晴らしくピュアな物語だった。

一般的にパンクのイメージはごちゃごちゃうるさい音楽だと思う。でも、パンクって、音楽のジャンルではない。ものすごく繊細な精神的なもの。なんか、それを代弁してくれた様な映画でもあった。

原作は、ポストモダンを代表するイギリスの小説家、ニール・ゲイマンの小説『壊れやすいもの』に収録された「How to Talk to Girls at Parties」だそうだ。読んでみたい。
MikiMickle

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