イチロヲ

性談・牡丹燈籠のイチロヲのレビュー・感想・評価

性談・牡丹燈籠(1972年製作の映画)
3.5
浪人(谷本一)との身分差の恋路に破れ、悲劇的な最期を遂げた少女(小川節子)が、夜な夜な死霊となって姿を現し、浪人との逢瀬を重ねようとする。三遊亭円朝口演の人情怪談噺をベースにしている、日活ロマンポルノ。

細かな部分が改変されているが、シナリオの大筋は原典通り。日活スタジオの時代劇セットをフル活用しており、映像は極めてフォトジェニック。画面の隅々にまで配置されている、あらゆる小道具に関心が高まる。

惜しむらくは、死霊の初登場シーンと、浪人に対する霊視シーンが、随分と淡白に描かれているところ。欲深い人間が報いを受ける展開も、マヌケな印象が強くなっている。ヒュードロドロ系の音楽が起用されていないところも残念。

しかしその一方で、浪人の隣人夫婦(橘田良江&木夏衛)がきちんと狂言回しになっており、原典のファンが期待するであろう「骸骨」の描写もきちんと登場する。一長一短ながら、手堅く作られたロマンポルノ流怪談映画といえる。
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