ひげしゃちょー

無限の住人のひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

無限の住人(2017年製作の映画)
4.5
例によって原作は知らないが、タイトル通りの凄まじいぶった斬り映画だった。登場人物が多いわりにその背景描写不足だから感情移入しにくいといういうのはわかる気がするが、久しぶりに血みどろアクション時代劇が観れて大満足。 個人的には万次の行動原理、凛の行動原理、天津影久の行動原理はきちんと描かれていたのでそれでいいのではないかと思う。次々と現れる一刀流の刺客たちは説明不足ではあるが闘いを通じてきちんと生き様が現れてる。特に閑馬永空なんかは。 一年生の息子と観たわけだが、思ってた以上に血しぶきが多くR15+じゃなくていいのかと心配になるぐらい。尸良が滝から落ちるときとの血飛沫は美しくさえあった。 万次の手が切り落とされて再生するところとかPG12のレベルじゃないと思ったが、万次が不死だということを伝えるには欠かせない描写だろうから映倫も目をつぶったんだろうな。 あの激闘の中、平然とおにぎりを食っていた田中泯の狂いっぷりが際立っていた。あいつの最期がああいう形で天津影久に斬られてどこかスッキリした。 死闘を通じて生と死の意味が深く問われる映画だった。 凛が投げたナイフが万次の背中に刺さるという三池崇史らしいブラックユーモアもあり、やはり三池崇史とアクション時代劇は相性が良い。 木村拓哉が『座頭市』の勝新太郎や『椿三十郎』の三船敏郎などと重なる。まさしくスターにしか出来ない佇まいで、それを真正面から娯楽映画に仕上げた三池崇史との化学反応が素晴らしい。 死なないとわかっているのにハラハラする立ち回りは本当に素晴らしい。木村拓哉という看板が真ん中にいたからこそ周りの演者も刺激されてこうなったんじゃないだろうか。 三池崇史×木村拓哉でまたこういう多勢に無勢な時代劇が観てみたい。 設定こそ漫画ならではのファンタジーで言葉も時代劇のそれとは異なり現代風だが、正真正銘の娯楽時代劇だ。