噛む力がまるでない

無限の住人の噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

無限の住人(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 原作は未読だが、映画としてはあまり面白くない。せいぜい面白いのは最初の30分ぐらいで、それなのに2時間20分もあるのがかなりキツい。漫画実写化のよくないところと芸能界のダメなところをまとめるとこんな感じになるのか……という感じだ。感想もやる気が出ないのでひたすら欠点をあげつらっていく。

 脚本がダメなのか編集が悪いのか、エピソードがぶつ切りで話の連続性がまったく保たれておらずえらく唐突なところばかりである。たとえば万次が凛の用心棒を引き受けてから次のシーンに変わると、急に黒衣鯖人が出てきてアクションがはじまるのは見ていてまったくピンとこない。そのあとも続々とキャラクターが出てきても本筋に大きく絡むことなく、万次との戦いを終わらせては早々に退場していく。
 閑馬永空は万次と対比できる見どころのあるキャラクターなのに一旦休憩を入れたあとすぐ決闘のシーンになるので溜めもなく、閑馬もあっさりと倒れてしまい登場した意味が希薄になっている。尸良に関しては完全に話の邪魔をしていて、クライマックスでの登場は盛り上げに水を差しまくっている。無骸流のエピソードを削ればもっと全体の印象が変わっていたんじゃないかと思う。
 豪華なキャストを見せ場のための見せ場にしか使えていないのは感心しないが、それにしても万次と凛の絆はしっかり掘り下げるべきだろう。死にたがっていた万次が生きねばならない理由となる凛との関係性に深みがないため、ドラマは単調で二人とも思い付きで動いているようにしか見えない。

 敵の武器を回収して自分の武器にするという万次のいかにもマンガっぽい設定そこだけでもカッコよくしてくれたら実写化の意味もあっただろうに、カッコよく見せようとする気がなくてぜんぜんワクワクしなかった。個人的に、万次と乙橘槇絵との戦いは長屋の狭い裏筋でやってるのに二人とも長モノを使っててほんとダメだと思った。
 木村拓哉の万次はルックス自体はそれほど悪くなく、演技は彼の一辺倒なところが出すぎてよくはないのだが、この映画の製作と公開がSMAPの解散時期と重なっており、斬られても斬られても立ち上がる姿は当時の彼のメンタルと結び付いているようでなかなか迫るものがあった。あと、天津三郎役の音尾琢磨はあれだけ短い出番でも場面に厚みを与えていて、いつ見てもいい役者だ。