jam

写真家 ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のことのjamのレビュー・感想・評価

3.9
9. 快い混乱
その通りに、
彼のアトリエはたくさんのもので溢れている
膨大な箱入りのネガ
痛んでしまったそれらを惜しみつつ、

"全てを知るのは良くない
心地良い混乱状態"のそれらは
晩年、漸く現れた助手のマーギットによって少しずつ整理され


50年代から60年代にかけて、ヴォーグなどのファッション写真家として活躍したソール・ライター
一時は表舞台から姿を消した彼が、
80歳を過ぎて再び注目を集めて

そんな彼、自ら語るドキュメンタリー
幼くしてカメラを手に入れた 1.カメラ から、
13. 美を求めて までの13章からなる彼自身の姿

求めれば、
もっと早くにもっと大きな成功を収めたであろう彼の
"本質はそうじゃない"という想い

神学の道を諦めるときの

いろんな種類の人間がいて、神も違う

という澄んだ瞳

そんなソールが唯一悔やんでいること
"我が友"と呼ぶ、長年共に暮らしたソールズを亡くしたこと

映画が好きで、私の才能を信じてくれた
彼女の幸せを考えたら、
"欲しいものをなんでも与えてくれる金持ちと結婚した方が良かった…"

彼女は私のせいで死んだ

ソールズの死後、入ることのなかった彼女の部屋へ
彼の贈ったプレゼントの包み、ひとつひとつ全て取って置いた彼女の温もりが、切なさを募らせて


自らの人生を振り返り
「あの小さな一冊があれば、十分じゃないか」というソール

彼の写真には
その時、その刻を切る取るだけではなく
終わりなく続く世界のほんの少しの欠片が写っている気がする
jam

jam