ロビン・ウィリアムスが演じるのは、60歳の銀行員、ノーラン。小さな町の小さな支店で、小さなデスクに座り、26年間、私たちのような普通の人たちの住宅ローンを助けて来た。奥さんのジョイとは寝室を別にしているが、憎み合っているわけではなく、昔付き合っていたことを懐かしく思い出したりする。親友のウィンストンは大学の教授で、しょっちゅう若い女子学生と付き合っては、ノーランとジョイの家に連れてくる。
ノーランのお父さんは寝たきりで養護施設に入っていて、時々見舞いに行く。炭酸飲料は体に悪いから飲ませちゃダメとナースに言われるが「この期に及んで何が問題なんだ?」と、ジンジャエールを飲ませて上げる。お見舞いの帰りに、フッカーやドラッグディーラーが客引きをしている道を通るのだが、ある日ノーランは、リオという若い男娼を車に乗せる。
地味ながらも安定した生活をし、親友もいるし、奥さんとも仲が良いのですが、ずーっと深~い悲しみがスクリーンを覆うようでした。なにがそんなに虚しいのか。
この映画は脚本を書いたDouglas Soesbeの実体験に基づいていて、彼はかなりトシを取ってから、ゲイであることをカミングアウトした人なんだそうですが、カミングアウトしたとき「ものすごい罪の意識に囚われた」とインタビューで言っていて「ああ、これは罪の意識なのか」と思いました。
ロビン・ウィリアムスがホントすごくて、大人しい性格で感情を表に出さないキャラなのに、心の内側がむき出しになっていて、本当に観ていて辛くなります。
ノーランが奥さんのジョイに打ち明けるシーンが、本当に身に詰まされます。2人の結婚生活は冷めているけれども、お互い好きだし、いい思い出もあるんです。だけど、ジョイは、「2人の関係は修復できる」と信じているけど、ノーランは「最初から上手く行ってなかった」という。ジョイも、実はそれを分かっているけど知りたくない、修復できると思いたい。これは本当に辛いです。『マリッジ・ストーリー』を観るならこれを観ろ!と言いたくなってしまいました。
レオという男娼のキャラも、とても深いんですね。シングルマザーに育てられ、お母さんのボーイフレンドたちに虐待され、家出してきた。男娼をして生活しているが、ピンプにピンハネされ暴力を働かれる。
ノーランがレオを大事に思うのがどういう感情なのかあまりわからないのですが、確かに2人は繋がるんですよね。レオは、ノーランが小さい時観たウェスタン映画を手に入れて、ノーランに上げたりする。
でも、レオは、ノーランの素直な愛情を受け入れられない。ただ抱きしめていたいと言われて
「セックスしようよ。こういうのは居心地が悪い」
と言う。この気持ちわかる!本当に心が触れ合うような関係になると、人間は自分の弱いところが出てしまう。弱いところを出して傷つけられてきた人たちは、もうそういう愛情を受け止めることができない。
レオを演じるRoberto Aguireという役者さんも、愛情に飢えていながらそれを受け入れられないという心理状態を好演していて、ガチで泣かされる。
ラストはコメント欄で!