最初は触れることもできないほど遠い存在が、いつのまにか近くにあったら?
年齢も、立場も全く違くても、言葉が二つの魂をつなぎ合わせるのしたら?
スーパースターのジョンFドノヴァンに何故だか強く惹かれて、ダメ元で手紙を書いた。
転校生で、チビで、子役で、母子家庭の僕はいじめられるのに十分で、一人きりの僕にとってジョンと、彼のドラマが人生の全てだった。
手紙のやりとりはいつのまにか100通以上にもなり、彼とのたわいもない会話が僕を形作る細胞になった。
物語はインタビュアーに、少年時代の事を語る『現在』と、ジョンがテレビで活躍していた『過去』が錯綜して描かれる。
母とも確執があり、少年にとって心の支えはジョンだけだった。
ジョンもまた家族間の確執で苦しみ、自らを偽ることで壊れてしまった。
あのままジョンが死ななければ違う形の関わり方に変化していったかもしれない二人の交流。
しかしルパート少年は偽りの中で苦しんだジョンの姿を反面教師として、ジョンとは違う道を歩き始めるのだ。
たかが10年の違いが彼らのような人たちが自分らしく生きられるようにしてくれて、ルパートのラストの笑顔へと繋がるのだ。
もう大丈夫、ぼくはきっと大丈夫だよって・・
物語の最初の時点で、ジョンはもうこの世にいない。ルパート少年とジョンの関わりの証拠は文通のやり取りがあったという事実だけで直接的に交わるシーンなどはない。
この2人をどこかで直接交わらるか、手紙の内容を明かして2人の関係をより深く見せる方法もあるのに、敢えてそうしないのもクールでセンスの良いドラン監督らしい演出ともいえる。
あからさまにしすぎないことで、ルパート少年とジョンの関係は2人だけのものであり、結果かけがえのない極上のラブストーリーに仕上がっていた。
ルパート少年がジョンに恋をしたようにドランはかつて、スクリーンの中で輝くレオナルド・ディカプリオに憧れの念を抱いていたという。
夢中になって、きっとルパート少年のようにスクリーンのレオ様に本気で恋をしたのだろうか。