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ジョン・F・ドノヴァンの死と生のエスのレビュー・感想・評価

4.9
”これは不寛容の物語。
大衆の指示を失うことを恐れる業界が、
何十年間も、無知で狭量な体質を変えない物語だ。
僕たちそのものじゃないか。社会がそれを求めている。
それを非現実的で無価値だと思えるの?”

相手の話を自分事として耳を傾け、考えることの大切さ。仕事仲間もパートナーも兄弟も、親も子でさえと一人の人間。相手の全てをわかり得ることは不可能に近い。それだけでは足りないからこそ経験が必要になる訳だけど、だからといって歩み寄ろうともしないのは違う。知ろう分かろうとする努力、姿勢。そこに生まれる温かさ。

かといって、誰にどう心を開けばいいというのか。このうんざりするような出来事が溢れかえって、鬱屈さに呑まれてしまいそうなこの世界で、どう自分を成り立たせればいいのか。その答えがこの作品にはあったような気がします。

ジェイコブトレンブレイの持つピュアさ、ナタリーポートマンの迫真の演技力に、キットハリントンが表情だけで魅せまくる孤独と限界。自分の大好きな演者さんの持つ魅力を凄まじい程理解してくれてる作品で、胸を打たれるような忘れたくないシーンが沢山あった。

他の演者さんも素敵な方ばかりで、皆、己を知っていて、かっこいい人間だった。

記者への心の底からの訴え、テレビを前に熱中していた過去を経てのポスターをぐしゃぐしゃにしてしまう程の失望の様子、雨の中のハグ、マネージャーとの対話、ダイナーの店主との会話、お風呂での家族団欒大熱唱、記者とルパートのラスト、思い出すと泣きそうになってしまう。いやあもう本当に良かったなぁ。ウインクをここまでかっこよく撮る作品他にない気がする。選曲も凄い良かった。見て本当に良かった。

””注目”が”監視”に変わる”っていうセリフにはハッとさせられた。自分にはない見方や価値観に触れられるから映画っていいんだなと改めて感じたり。

この監督の作品もめちゃくちゃ気になったものが沢山あるので漁ろうと思います……良い出逢い……この多幸感………

”求めるものは同じ。変化と衝撃。
恐怖 無知 偏見をなくしたい
性差別 人種差別 同性愛嫌悪
戦うのはあなた一人?”

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