カント

アナーキスト 愛と革命の時代のカントのレビュー・感想・評価

3.9
革命に殉ずる事に酔う女性と潜入捜査官。愛と革命のヒューマンドラマ💡彩度を抑えた暗い色調はアナーキスト達の、陽の当たらない生き様のよう。

パッケージのアデルは、少女のあどけなさが残るけれど、劇中では影のある妖艶さが際立って陰気です😞

✏1899年、世紀末パリ。ジャン・アルベルティーニ巡査は当局からマークされているアナーキスト達の組織へ潜入捜査を命じられた。それは誰にも明かせない極秘任務。恋人のマルタに別れを告げて、アナーキスト達の集う工場で働き始めたジャン。
※1899年と言えばエッフェル塔が建築されてパリ万国博覧会が開催された年。芸術文化の華咲くパリは、一歩地下に潜ればブルジョアから搾取された労働者の悲哀が漂う街だった。

工場で出会うアナーキストのリーダー、ウジェーヌ。過激な発言のエリゼ。行動派ビスキュイ。潜入したジャンは彼らと徐々に距離を詰める。

彼らの拠点マリー・ルイーズの邸宅。ジャンが出会ったのはウジェーヌの恋人ジュディット。先の集会で検事を批判する詩を歌い上げていたジュディットもまた、兄やアナーキスト達と革命に命を捧げる女性だった。
※ジャンがジュディットに対して「サロメ?」と問いかけるシーン。ジュディットの名は聖書に登場する「ホロフェルネスの首を斬るユディト(ジュディット)」と同じ名前なので、サロメと同じく『男の首を斬る女』と揶揄した呼び方。

アナーキストの理想社会は「自由」を標榜するものだけど、その為には武器を取るべき。軍資金も調達しなければ!墓の埋葬品を盗み、ブルジョアの家に空き巣に入り…小悪党の真似事をするアナーキスト達。潜入捜査中のジャンも行動を共にする。

いよいよ彼らの計画が明らかになってきた。ジャンは疑われつつも計画を当局に伝え、しかも実行犯として動く。彼らの計画とは💡

…路上のビスキュイの結婚式が、アナーキスト達の儚さを象徴していて素晴らしい。ラストシーンでジュディットが嗚咽と咆哮を我慢して拳を噛むシーンが、とても良い。渡航の“怨み節”の独白も良い😌
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