ひろぽん

あやしい彼女のひろぽんのレビュー・感想・評価

あやしい彼女(2016年製作の映画)
4.6
73歳の苦労を重ねてきた毒舌でトラブルやお節介を起こすおばあちゃん・カツがひょんなことから20歳に若返り騒動を巻き起こしていく物語。

韓国版『怪しい彼女』のリメイク作品。

オリジナルの作品は1度も観たことがないが、この作品は好きで何度か観ている。


街の人達からは厄介者扱いをされる毒舌で頑固な73歳のおばあちゃん・カツが、娘と喧嘩して家出をして、オードリー・ヘップバーンの写真が飾ってある不思議な写真館に吸い込まれるように入ったことで20歳の頃の若い容姿を取り戻す。女手一つで娘を育てあげ謳歌できなかった青春を再び取り戻し、歌に定評もあったことで孫の翼のバンドに入り歌手として活動を始めていく。果たしてカツの運命はどうなるのかという家族愛溢れるお話。

倍賞美津子演じるカツが若返った20歳の節子役を演じる多部未華子の熱演が半端ない。独特な動きをする仕草や気の強い話し方、昭和感溢れる雰囲気は本当に若返ったような違和感のない演技で素晴らしい。

若返った当初は老人のような仕草なのに、時間が経つにつれ20歳の自然体な動きへと変化していくのが凄い。

そして何より特筆すべき点は、多部未華子の歌声が透き通った綺麗な声で昭和の名曲を歌っている点にある。The Folk Crusadersの『悲しくてやりきれない』を多部未華子がカバーして歌っているのが、美しい声すぎて泣けるくらい心に染みる。日本が戦争で貧しい時代から食べ物が無く幼なじみの次郎と食べ物を分け合ったり、シングルマザーとして娘を育てるなどの苦労をしてきた人間のやりきれない思いがあるからこそ心に刺さるものがある。

『この世界の片隅に』でも主題歌としてコトリンゴの『悲しくてやりきれない』が使われてるがそれとはまた違った良さがある。

ヴィジュアル系のバンドをやっている北村匠海のメイクしている姿と演奏スタイルが思いのほか面白すぎて笑える。そりゃ、売れないしボーカルに逃げられるだろうなというのがよく分かる。

若さや美貌、新しい愛や可能性、歌手としての成功よりも家族を大切にするカツの愛が尊い。冒頭とラストの輸血シーンが繋がるところで感動がどっと押し寄せてくる。

苦労しているからこそ子育てをする母親の気持ちを理解してあげたり、うじうじしている男たちの背中を押してあげられるんだろうなと思った。母親のような安心感のある頼もしい20歳って最強すぎや。

60年代の曲やヘアスタイル、ファッションは全く古臭さを感じず、一周まわってオシャレな雰囲気に仕上がってるところも良い。

チョイ役で野村周平が登場するのも珍しい。

家族愛がたっぷり詰まってて大好きな作品。
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