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風櫃(フンクイ)の少年のKuutaのレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
4.0
ドキュメンタリータッチな映像と構図の決まった「映画のような」映像が丁寧に並べられている。平家の多い風櫃の街並みと、二階建てアパートの対比の妙。あのアパートの間取りすごい。

都会に出ると縦の構図が増える。辿り着いた廃ビルのワイドでカラーな映像は確かに「映画」に見えるが、カメラのパンに伴って、画面に少年たちが映り込む度に、これは映画の中なんだと提示され直す入れ子構造。ここでも「映画」と「映画じゃないもの」が行ったり来たりしている。

序盤の風櫃の美しさが、都会でのあれやこれやに押し流されていく。過去を、つまり映画を見る事で少年期に止まっていた少年の脳裏には、座り続けた父親、死のイメージが引っかかっている(父親は影の中に隠され、椅子はフレームアウトさせられる)。

映画を見るようにぼんやり座っていた彼が、兵役を意識しつつ、ラストシーンで立ち上がった瞬間、少年期は終わりを迎える。街に溶け込んだ少年の声が響く中、カメラは路上で働く大人たちしか捉えない。日常を動かしてきた音楽(不自然なまでのBGM)を、安売りし始める事で大人に向かうのが大変切ない。
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