革芸之介

風櫃(フンクイ)の少年の革芸之介のレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
4.8
青春映画は万国共通です。大体ボンクラが考えることはエロばかり。で、喧嘩して退屈で、この窮屈な地元から出ていきたい。

しかし、ホウ・シャオシェンの青春映画もボンクラ達を描くんだけど独特の詩的な味わいがあるのです。

この人の映画は構図が良い。画面の切り取りかたが、すごいうまいんですね。画面の奥にドアや窓や門を配して、さらにその奥に人物を配すると、ドアや窓や門が額縁のようになり画面に彩りが出ます。

本作でいうと、主人公の実家の内部から撮るショットは奥に入口のドアを配して、その奥に主人公の父親が椅子に座っているカットや、海でかわいい女の子に見せつけるためにボンクラ四人が波しぶきをバックに馬鹿な動きで踊りますが、そこでロングショットで女の子のいる小屋の中からのカットに変わりその小屋の入口から4人の馬鹿踊りを撮るセンス。面白いです。

こんなボンクラ達が地元で問題起こし、都会の高雄に出てきて、いろいろ悩み喜び成長していく物語。

都会の描写で素晴らしいのが、ボンクラ達が怪しいオッサンに「いい映画やってるよ。観ていかない」と勧誘され(まぁニュアンス的にスケベなエロ映画なんだろうけど)で、まんまと騙されて金を払い廃墟のビルに行きますが、もちろんそんな映画なんて上映されてる訳もなく、「騙された!」っなるんだけど、暗いビルの中をうろつきカメラがそこでパンすると、街を一望できるぐらい高所からの高雄の街が目の前に映し出され、確かに映画も何もなかったけど、この生の展望風景の雄大さには感動しました。
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