つるみん

風櫃(フンクイ)の少年のつるみんのレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
3.8
世界に侯孝賢という名を知らしめた80年代の台湾ニューシネマ作品。この作品の後に『冬冬の夏休み』や『童年住事』『恋恋風塵』などが生まれたと考えると、一貫して侯孝賢は我々にノスタルジックなものを与えていたのだなと分かる作品。

アジア人はともかく、本作が仏で評価されたという所に西欧人にも懐かしいものを感じさせたというのは凄い事。若者を通して描く、離島の美しさ。不良少年から大人へと成長していく様は世界共通なのだなと。

常にどこか自伝的な要素を入れ込む侯孝賢。だからこそリアルに見えるし、心の底から共感できる部分が多い。そして何よりその時代の台湾の社会情勢が分かりやすい。

これはまさに男4人のファンダンゴ。島から抜け出し、都会の高雄へ。そこで仲間たちと酔っ払い、時には将来を気にしたり。そして儚い恋愛をしたりなど。
とにかくラストは余韻が残る。今となっては高雄から台北は2時間くらいで行ける距離でさほど遠くはないけれど、彼からすればずっと隣にいるものだと思っていた彼女が突然離れるというのは、距離とかそういうのは関係なく、心に大きな穴が空いたに違いない。仲間の「他にも女はいるって」という素っ気無い言葉に励まされた訳ではないけれど、ムキになって叫ぶラストは何だか分かるな。
つるみん

つるみん