なしの木

メッセージのなしの木のネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

泣いた。面白かった。異星人からのメッセージが中々わからなくてやきもきドキドキしたけど、監督からのメッセージはすごく分かりやすかった。それは「人はいつか死ぬ、けれど、だからこそ今を大切に生きよう」「いつか死ぬとわかっていたところで、その命は無意味ではないかけがえのない大切な命なんだ」という事だと思う。
ペプタポットには時間の概念が無いような話だったけど、それならば死の過程というのはどういう解釈をすべきなのだろう。時間の流れが無いということはすべての時間が同時に存在して過去と未来と現在の区別がないということでそんな生き物が言う死の過程とは?生きている以上常に死の過程なのでは?そもそも生と死が存在するのであれば時間の経過の概念もあるのではないかと思う。時間が経過するということは認識できるけどそれはそれとして生きているかぎりの全ての時間を同時に感じることができるというのとなのかな。その辺りは原作を読んでみないとなんとも言えないけど、原作も難解そう。フェルマーの定理とか理解不能でしょう……。(後日原作履修、なるほどわからん)
夫と別れた理由がわかった!きみ結婚してたっけ?のやり取りは笑った。数学者の方が急速にデレる、そしてコミュニケーション下手だから独身って言うのが離婚する伏線になっていて面白い。
それでも別れてしまうことないんじゃないかと思ったけど、彼には耐えられなかったんだろうな。全て覚悟の上でハンナを授かったルイーズと、突然この子は大人になれずに死ぬと告白された(それまではルイーズは言うのをなんとか我慢していたのだろうけど我慢しきれなかったのだろう)イアン。娘には輝かしい未来があると信じていたのにそれが裏切られた、そしてそれに対して自分は何も出来ない無力感、娘の側にいてあげたいけどどんな顔をすれば良いのかわからない、そんな複雑な悲しみがそれまで秘密を明かさなかったルイーズへの怒りになって表出されたのだろうな。ルイーズは運命に抵抗しようとはしなかったのかな。もうそれは起きてしまったことと同義で変えようがないものだったのか。序盤でハンナとの思い出(実は未来)の中のルイーズが時折曇った顔を見せていたのはハンナの死に思いを馳せていたからなのかな。
イアンはきっとハンナの将来についてよく考えて語っただろうし、そんなときルイーズはどこか上の空でそんなことより今を大事にしましょうみたいなことを繰り返したかもしれない。そんなルイーズを不審に思ったイアンをルイーズが問いただしたとしても不思議ではないし、子供との時間があとどれだけか知っている人と知らないでいつまでもこの時間が続くと思っていう人が一緒にいる事はさまざまな軋轢を産むと想像に難くない。
非ゼロ和ゲームという言葉には馴染みがなかったけど、ゼロサムという言葉は漫画かゲームの題名かなんかで聞覚えがあった。0とSAM=合計って意味だと知ってなるほどと膝を打った。エクセルのアレね。この言葉を知るという体験が、作中の新しい言語を知ることで考え方が変わる、作中でルイーズが未来が見えるようになったことをそこまでではなくても追体験したように思えてならなかった。
この作品は言葉の持つ力を全面に押し出している。
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