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メッセージのEyesworthのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.8
【言語で繋がるラブ&ピースSF】

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がテッド・チャン『あなたの物語』を原作に映画化。人類と宇宙から飛来した謎の知的生命体とのやり取りとその結末を描いた2016年のSF作品。

〈あらすじ〉
ある日エイミー・アダムス演じる言語学者のルイーズ・バンクスがアメリカ陸軍のウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)から声が掛かり、突如として地球に降り立った巨大な殻の中に存在する謎の知的生命体との意思疎通を図る役割を預かる。
彼らは一体どんな目的を持って地球にやってきたのか、その理由を探るというのが重要な任務だが、そのためには全く地球の言語を解さない宇宙人に「What's your purpose on Earth?」という一つの言葉を理解させて応答してもらう、というシンプルだが難解な手順を踏まなければならない。ヘプタポッド(ギリシャ語で「7本の足」)と名付けられたそのタコのような知的生命体は触手から墨のような液体を発し、輪状に字を描く伝達手段を持ち、それを手掛かりにルイーズのチームは彼らの言語を解読しようと試みる。何度も交渉した末に彼らのメッセージを解読することに成功するが果たしてそれは人類にとって喜ぶべきことか?はたまた悪い知らせか?

〈所感〉
SF作品といえば、とかく人類VS地球外生命体というシナリオになりがちだが、その構図とは異なる角度から彼らを描いている点が大変新鮮に感じた。交渉するうちにお互いの間に愛情とは言えないが、言語という架け橋を通じて相互理解という収穫を得ていく過程が面白い。作中で物理学者イアンとの会話に登場するサピア=ウォーフの仮説(言語的相対論)は、人間の認識・思考はその扱う言語によって影響されるという説だが、それは宇宙人も同様に宇宙人なりの言語=伝達手段があり、ルイーズはそれを紐解くうちに彼らの認識・思考を獲得していく。その能力はやはり今の我々の感覚からすると並外れたものだが、もしこんな能力を提供してくれたら確かにそれは我々人類を繋ぐ最高の武器になるかもしれない、と思わずにいられない程ファンタジー心を存分に熱くさせてくれるメッセージを持っていた。また、度々フラッシュバックのように発作的に入る少女が登場する回想(のようなシーン)が効果的な演出で作品を貫く軸になっていて好感。
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