なべ

メッセージのなべのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
5.0
 SF的素養と洞察力、しなやかな思考力が求められる映画。考えないでただ漫然と情報を受け流す人にはこの映画の良さは伝わらない。
 もちろんSFが苦手でも、注意深く、繰り返し観ることで凝りに凝ったつくりに気づけるんだけど、そもそも苦手な人は何度も観ないんだよね。結局理解されないままか…残念。
 例えば、その先に不幸が待っているとわかっていてもこれから生まれてくる娘に会いたいって気持ちはエゴだろうか。そうじゃないよね。そういう覚悟や勇気は尊いものではあっても、独善的ではないはずだ。もしいつか別れるとわかっていたら、目の前にいる好きな人とは付き合わない?そんなことないでしょ。
 アボットも自らが死ぬことはわかっていたけど、どうしてもルイーズに会いに来なければならなかったのだ。3,000年後の未来のために。アボットは予知できなかったんじゃないよ。死を覚悟の上でやってきたのだ。
 いつか訪れる死を理由に結婚や出産を断念するのは生きることの放棄だと思う。すべてを折り込んだ上でその道を進むことは決して無責任ではなく、崇高で、尊く、誇らしいこと。そこにモンクを言ってる人が多くて驚いてる。
 バカにものを言うように何でもかんでもセリフで解説しちゃう映画が多い中、媚びることなく、毅然と、しかも丁寧につくられた本格的な映画。テーマ、ストーリー、ビジュアル、演技、音楽、すべて素晴らしい。満点!
なべ

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