自宅で。
2017年のSF映画。
監督は「灼熱の魂」のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
話はある時、世界各地で謎の宇宙船が現れる。事態の究明のため、招集された言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス「ジャスティス・リーグ」)は同じく招集された物理学者のイアン・ドネリー(ジェレミー・レナー「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」)と共に地球外生命体との交信を図るというもの。
初めて、今作の存在を知ったのは、確か「映画秘宝」の映画祭上映レポートの記事。
そん時も、なかなかの評判だったようだが、今作の監督、ドゥニ・ヴィルヌーヴが「ブレードランナー」の続編を撮ることに決まってから、更に評価の勢いを増したという印象で(元々フォロワーの皆さんは評価していましたが)、俄然観たくなり、鑑賞しました。
ちなみに、個人的にはドゥニ監督作は「複製された男」「プリズナーズ」「ボーダーライン」と過去に3本観ていますが(「ブレードランナー2049」は恥ずかしながら、未見)、面白いは面白いんだけど、どれも「長い!」という印象ではてどうなるかという感じ。
観た結論から言うと、なるほどこれは確かに評価されるだけあって、人によってはその年のベストとして挙げられても何ら遜色ない作品でした!
今まで、地球外生命体飛来もののSF映画というと、どうしても「武力行使」というイメージが付き物だったけど、今作では「なんのために地球外生命体は地球に来たのか、そして何が目的なのか?」を「コミュニケーション」という方法を用いて、交流を図るということで(まぁ、その先には宇宙人の飛来目的に応じて武力行使もやむなしの状況だが)、なんつーか、新鮮。
また、この地球外生命体=通称「ヘプタポッド」っつーのが、まどろっこしい!!
巨大なばかうけ…いや宇宙船の構造からいって、間違いなく人類よりも科学技術は進んでいるはずなのに、コミュニケーションの手段である言語?絵文字?サイン?は言ってしまえば「空中に浮かぶ墨字のサークル」であって、まったく意図が不明…笑。
だからこそ、言語学者ルイーズの手腕が発揮されるというものなんだけど、それこそもっと良い方法なかったんか!と思わずにはいられない。
まぁ、そうなると話は始まらないわけなんだけど笑。
けど、そのまったく意味不明な文字を一つ一つ解き明かす描写は謎解き的な爽快感と丁寧に描きこむことで「へぇー、未知の言語を解き明かす工程ってこうやってるんだー」と感心してしまった。
しかも、その未知の言語を使って、最終的にはちゃんとコミュニケーションを図って、意味まで理解してしまうんだから、なんつーか感動的だった!!
ありえないことをやってのけたっていう達成感と普通なら相入れないものとの意思疎通ということへの喜びというか、あー上手く表現できない!!
また、あくまでもそこに重点を置く作品なだけに主人公のルイーズ然りイアン然り、人間側が理性的なキャラだったことも大きいと思う。あんま人間側がくよくよしてるとダレるもんなぁ。
けど、その中で挟み込まれる「過去」の回想シーン。
後半明らかにされる「ある仕組み」がわかる時、ハッとしてしまった。
なるほど…。そういうことか。
思い込みってのはすごいもんで完全に「過去」の話だと思っていた回想パートがまさか「未来」の話だったとは。
だからこそ、全てをわかった上で現在を生きようと決意するルイーズが堪らなく悲しい。
いくらでも湿っぽくできそうな終盤のルイーズのシーンも、あくまでも作品全体のトーンを変えず、静かに讃えるようにルイーズ自身の「先に待ち受ける未来」への「覚悟」を描いていたことに対しても感服。
「未来のことが何でもわかっちゃえばなぁ」と妄想したことは誰しもがあると思うんだけど、確かに恩恵は計り知れないほどあるかもしれないけど、同時に悲しいことや辛いこともわかっちゃうんだよなぁ。
俺だったら目を背けたくなる。
それでもルイーズはそこで感じた気持ちを大事に一瞬一瞬を大切に生きることを決意する。
ヘプタポッドがもたらしたのは「未来を見通す力」。
けど、辛い現実も悲しい過去も全て肯定し、前を向いて生きようとするルイーズの生き方そのものが本当の意味での「武器」なのかもしれない。