ヒナタカ

ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!のヒナタカのレビュー・感想・評価

4.7

いや〜こいつぁ最高ですね。
何がって4DX専用の映画であり、その機能を完全に使い切っていることです。

<4DXの効果>
(1)座席が動く
(2)雨が降る
(3)ミストがブシャッ
(4)エアーがプシュッ
(5)風がヒューヒュー
(6)フラッシュピカッ
(7)香りがふわっ
(8)煙がモクモク
(9)嵐が起きる(風+水)
(10)???(観てのお楽しみ)

「えー、4DXって座席が動いたりしているだけでしょ?つまんなくない?」と思っている方へ。4DXなめんな。サービス精神満点な、超・超・超ゴージャスな演出が押し寄せてくるんだぞ!


本作『ボクソール★ライドショー』では、「没入感」も半端ないです。
じつは『クローバーフィールド/HAKAISHA』や『ヴィジット』のようなPOV(主観視点)で作られており、映像はすべて「実際のカメラの映像」というものになっています。

これに4DXの「座席が動く」という要素が組み合わさると……まるで自分が小さくなって、カメラのレンズの前に座って観ているような感覚に陥ります。

これは遊園地のアトラクションでも味わえない、初めての体験になるのではないでしょうか。


さて、映画本編の内容を語りますと、本気であたまのおかしい(褒め言葉)内容となっております。

本作の内容は「女の子3人がお化けに出くわして廃校を走り回るというだけ」と思う方はきっと多いことでしょう。
まあだいたいその認識であってるのですが、それだけではまだ甘い、甘いのです。
白石晃士監督は、わりとポカーンとする超展開に定評のある方。クライマックスは良い意味で「バカじゃねえの?」と思うことができるでしょう。

あと、作中に出てくるお化け(と呼んでいいのか?)の安っぽいこと。
ガムテープで人間をグルグル巻きにしたようなブツが平気で襲いかかってきますからね。
いや、実際に見ると出来自体は良くて、けっこう不気味ではあるんだけど……これは恐怖よりも先に笑いがこみ上げてくるよ。

あ、ちなみに本作は一応ホラー映画なのですが、実際は
恐怖:笑い=1:1000くらいの割合となっております。
中盤から観客から聞こえてきたのは「キャー!ワー!」とかじゃないですからね、「ギャハハハハー!(爆笑)」ですからね。
ぶっちゃけちっとも怖くないのですが、ここまでみんながニコニコできるコメディ大作(言い切った)もそうそうあるものではありません。

地味にすごいのは、本作は上映時間中ずっとワンカットで撮られたような演出になっていること。
つまりは『バードマン』といっしょです。
もちろん本当にワンカットで撮ったわけでなく、カメラにノイズを走らせて、そのときにカットしてつなぎ合わせているのですが、観ているときにはまず違和感を得ることはありません。
(白石監督は『ある優しき殺人者の記録』という、これまた全編ワンカットの映画を手がけていました)

あとね、4DXの素晴らしい演出は詳しく言うとネタバレになってしまうのですが……それでも、ひとつだけ言わせてください。
カメラマンが女の子の後ろに隠れるとき、女の子のいい匂いがする演出があるんですよ!監督(と演出を考えた方)はバカだろ!(褒め言葉)
もうひとつ、女の子にされる行為としては変態限定で喜べる演出があるんですが、それはさすがに秘密にしておきます。


ちなみに、過去の白石監督の『コワすぎ!』シリーズを観ている方には嬉しい要素もあります。
その理由のひとつが、この『コワすぎ!』シリーズと同じく、白石監督自身が「田代正嗣」という名前のカメラマンとして映画に出演していること。
ほかにも白石監督作品にはおなじみのクリーチャーが登場するので、ファンであればよりニヤニヤできるでしょう。


本作『ボクソール★ライドショー』は、4DXを初めて体験する方はもちろん、大作映画の4DX版を観て物足りなかった方にも観て欲しいです。
なぜかと言えば、「そもそも4DXを想定して作られた映画」であるため、演出の豪華さに一切の遠慮がなく、演出と画面のシンクロ感がハンパないから。

実際、現在公開中の『スター・ウォーズ』の4DX版は、少しそのシンクロ感に乏しいと感じる方、映画への没入感をかえって下げてしまったと感じる方もいるようです。

なお、『スター・ウォーズ』では、上記の4DXの演出のうち、「(10)???(観てのお楽しみ)」が一切ありません。

もちろん『スター・ウォーズ』の4DXの出来が悪いということは決してないのですが、「4DXはひとつ観れば十分だな」と思ってほしくはないのです。
もし、『スター・ウォーズ』だけで4DXを観ているのであれば、「まだこんな演出があったのか!」と驚けるでしょうから。


あと、タイトルの「ボクソール」ってどういう意味?と思っていたら、世界最古のテーマパーク「Vauxhall Gardens」(なんとオープンは1661年!)からの引用だったんですね。
作中に登場する遊園地につきもののピエロ(実際の設定は「番人」)の造形は、『マーダー・ライド・ショー』の変態オヤジや、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスを思わせるところがあり、いい感じに不快感をあたえてくれます。


なお、本作『ボクソール★ライドショー』の上映時間は25分となっておりますが、これでも大・大・大満足できます。

前述のとおり、この短い上映時間で4DXの演出がすべて凝縮されているわけですし、鑑賞料金は1300円とリーズナブルなのです。
むしろ、この短さは長所と呼ぶべきでしょう。

4DXは通常料金+1000円という料金がかかります。
通常の映画であるとひとりにつき最大2800円、3D演出込みだと3200円というハードルの高すぎる料金設定です。

ところが『ボクソール★ライドショー』はふつうの映画よりも500円も安いという超良心的価格。
これまで、「4DXは高くてちょっと……」と躊躇していた人にとっても、絶好のチャンスでしょう。


ともかく、これは革命的なエンターテインメントとして超オススメします。
これ映画じゃなくてアトラクションじゃね?というツッコミどころはありますが、細けぇことはいいんだよ!

わざわざ遊園地に行かなくても、気軽に楽しめるという点は間違いなく長所。
「映画って退屈なところがあるとすぐ寝ちゃうんだよね〜」という方にもピッタリ。本編中はひっきりなしに走ったりお化けが楽しく飛んだり跳ねたり(笑)するばっかりなので、眠くなるなんてことはまずありえません。

なお、作中には多少ドッキリするシーンがあるものの、グロやエロ、流血シーンはほぼ皆無なため、お子様にも安心です(ただし、身長100センチ未満であると4DXは体験できないので注意しましょう)。

なお、予告編では「水浸し!(着替え必須)」とありますが、実際は服がちょっと濡れる程度なので着替えの必要はまずないかと思われます。
それでも、ほかの4DXの映画と比べると3〜4倍は水の量が多かったので、それなりに身構えておきましょう。

唯一の欠点は上映劇場が少ない(中四国をハブるなよ……)こと!
こんな大傑作を体感できる場所が少ないとは……憤らざるを得ません。

ともかく、『ボクソール★ライドショー』はオープニングのうさんくささから、中盤の爆笑シーン、クライマックスの超展開、やたらと格好いいエンディング(ここでも4DXの演出が!)に至るまで、至福としかいいようのない25分を過ごせる、4DX史上最高の作品です!

なお、作品の内容そのものが「劇場に観に来た人」向けに作られているので、DVDなどのソフトは発売されない可能性があります。この機会を逃すと、二度と観ることはできないかも……。

お化け屋敷に飢えている若者にとくにオススメ、デートで観たら忘れない思い出になるはず。
主演3人の女の子のファンのおじさまにももちろんオススメです。
予告編の時間が短いそうなので、早くめに席に座っておきましょう。
近くで上映していたらぜったいに観ましょう!


そして、今年公開される、同じく白石監督『貞子 vs 伽椰子』も4DXでの上映が予定されています。
もうホラーと4DXの相性が抜群だということがわかりまくったので、これも必見です!
ヒナタカ

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