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『ポストヒューマス』に投稿された感想・評価

genarowlandsの感想・評価

2022/08/01 16:10

3.8

トム・シリング目当てだったのに、画廊の助手役だった。主演はジャック・ヒューストン。シンプルなラブストーリーだけど、落ち着いたベルリンの街を背景に、現代アーティストのリアムと美術ジャーナリストのマッケンジーの二人の関係がじっくり深まっていく丁寧な作りで好感を持てた。タイトルは意訳だと「死後に認められて」。現代アートの価格のからくりとアーティストの心の叫びを通して二人は共鳴していく。

目先の商業主義の画廊主ダニエルに、リアムは展示してもらえない怒りをぶつけても、売れるアートでなければ意味がないと一笑され、倉庫に眠る作品を燃やし、飲んだくれる。

翌日、リアムは亡くなったホームレスと間違えられるが、亡くなったことで突然作品に人気が出て、画廊は儲かる。儲かるので、ダニエルはリアムを死んだままにしておきたい。隠れて作品を作り続けるように言われるリアム。そこで出会った美術ジャーナリストマッケンジーにリアムは自分をリアムの弟のジャクソンだと話をするが、アートや哲学を熱く語るジャクソンをリアムだと見抜くマッケンジー。

アーティストの生き方と、(バンカーか投資家の)婚約者の安定した生き方の間で迷い、マッケンジー自身も仕事への取り組む姿勢を変えていこうとする。

けっこう地味な話。盛り上がりは最初のドタバタだけで、以降は二人のアート談義。だけど、じっくりと互いの生き方を対話する奥深い作品。

アーティスト自身に惹かれる以前に、作品に先に惹かれたからマッケンジーは作品の背景の哲学を知りたくてジャクソン(リアム)をもっと知りたがった。同じようにリアムもマッケンジーの興味ある仕事に興味があった。

婚約者はマッケンジーが為したい仕事にはあまり関心を持たない。どんなに彼女がキラキラと目を輝かせて語っても。彼女が仕事することに、暗に反対しているのがわかる。

やっぱり、相手が何に興味があるのか、なぜ好きなのか、好きな相手の好きに関心もつことは大切。同じように好きにならなくても。

現代アートはベルリンの街のあちこちにあるのかな。やたら背の高いベンチもアート。実用にはならないのに、巨人用のベンチには何かアクション起こしたくなる。背伸びしてしがみついて登って座りたくなる。こちらに何かを惹気している。リアムはマッケンジーにとって、そんな存在だった。

オチは画廊主ダニエルの苦肉の策。現代アートだからできたこと。

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