町蔵

小麦の買占めの町蔵のレビュー・感想・評価

小麦の買占め(1909年製作の映画)
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〈グリフィスの3つの世界〉 (ヴァイオリン演奏:安田つぐみ)
■1908年の夏に〈バイオグラフ社〉の監督となったグリフィスは、翌1909年にかけて膨大な数の作品を監督。
半年、1年、そして1年と数か月での恐るべき進化と映画の可能性を切り開いたことがわかる3作品。大都会の裏町を描いた犯罪ドラマ、金鉱山での三角関係、そして農夫と富豪の見えない対立から資本主義の恐怖を描いた傑作を撮った。
①「祭壇にて」At the Alter 
1909/16コマ/15min 
〈アメリカン・ミュートスコープ&バイオグラフ社〉
撮影:G・W・ビッツァー
  アーサー・マーヴィン
出演:マリオン・レオナード
  チャールズ・インスリー、
  バリー・オムーア
  アーサー・V・ジョンソン
  マック・セネット
●NYのイタリア人街の下宿。女主人の娘ミニーはロマンチックな夢を見るが、粗野なシチリア人のグリゴに求婚されるが本国イタリアから移民してきたヴァイオリニストのジュゼッペを愛するようになる。しかしグリゴが復讐を誓い結婚式に拳銃仕掛け…。
■グリフィスにはユダヤ人、アイルランド人、日本人など外国人とその文化を背景にした作品も多いが、これはカソリックのシチリア人を題材にした犯罪映画(公開1909年2月25日)
②「放棄(引き裂かれた愛)」
Renunciation 1909/16コマ/16min 
〈アメリカン・ミュートスコープ&バイオグラフ社〉
撮影:G・W・ビッツァー、アーサー・マーヴィン
出演:メアリー・ピックフォード(キティ)
   ジャック・カークウッド、
   アンソニー・オサリヴァン、
   ビリー・カーク
●ゴールドラッシュに沸く鉱山町イエローヒルで金の採掘ジョーとサムは幼馴染。しかし東部から父とやってきた娘のキティに夢中になり争うことに…。
■僻地の金鉱で起こる友情と諍いの物語。再公開時には「引き裂かれた愛」と題された(公開1909年7月19日:再公開1916年)
③「小麦の買収」
A Corner in Wheat 1909/16コマ/16min 
〈バイオグラフ社〉
撮影:G・W・ビッツァー 
原作:フランク・ノリス 
脚本:フランク・E・ウッズ
出演:ジェームス・カークウッド(小麦農夫)、
   リンダ・アーヴィドセン(その妻)、
   グラディス・イーガン(その娘)、
   W・クリスティ・ミラー(農夫の父)、
   フランク・パウエル(小麦王)、
   グレース・ヘンダーソン(その妻)、
●食うや食わずの貧しい農夫の一家が小麦の種を撒いている。一方、NYの大富豪は、毎夜、豪勢な宴会を繰り返し、一方で小麦を買い占めて値段を上げて暴利を貪ろうとしていた。小麦の仲買も困り訴えるが、小麦王は無視する。やがて小麦の価格が上がり、農夫がパンを買いにいっても日々値が上昇し、小麦を育ててもパンすら買えないように…。
■アメリカ自然主義作家フランク・ノリス原作の「小麦」「穴」の映画化。貧しい農夫と資本家という直接関わることのない世界を並行して描き、資本主義の世界を15分で見せ、その後ソ連のエイゼンシュテインのモンタージュ論にも大きな影響を与えた映画史に残る傑作。
(公開1909年12月13日)
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