「ルパン三世 カリオストロの城」の元ネタの一つ。オーソン・ウエルズが「第三の男」(1949)と同年に主演した、フランス革命前夜のサイキック・ダーク・ヒーロー映画。監督クレジットはグレゴリー・ラトフだが、ウエルズも監督に加わり最も楽しんだという一作。
ジプシーの両親を虐殺された少年は権力を憎む。大人になるとカリオストロ伯爵(オーソン・ウエルズ)を名乗り、黒魔術(催眠術)の力でマリー・アントワネット王妃の転覆を企てるのだが。。。
ウエルズがハマリ役で格好良い。あの目力とカリスマ性は催民術師として非常に説得力がある。有名な”マリー・アントワネットの首飾り事件”をモチーフにしているのだが、当時首謀者として逮捕されたカリオストロ伯爵を主人公とする設定が秀逸。マリー王妃と瓜二つの女性を妻にするという荒唐無稽なストーリーも、ウエルズの決して腹の内を見せない巧みな演技によって、文学的な深読みも可能なレベルに引き上げられている。
それまでにあった義賊ものとは違う、後のダーク・ヒーロー像の先駆とも言え、その幕引きのケレン味まで完璧。当時は早すぎたキャラクター造詣だったかもしれないが、現在であればもっと再評価されても良いのではないだろうか。
※モーリス・ルブランの小説「怪盗紳士ルパン」では、ルパンの最初の犯行対象が本作に登場する首飾りである。