たむ

パリはわれらのもののたむのレビュー・感想・評価

パリはわれらのもの(1961年製作の映画)
4.0
ヌーヴェルヴァーグの兄といわれながら、監督デビューが最も遅れたジャック・リヴェット監督の長編映画監督デビュー作です。
観るとその理由は非常によくわかります。
他の監督がジャンル映画でデビューする事が多く、難解であっても映画の売りがわかりやすい映画でした。
この映画はシナリオで渡されても、何をどう売りにしたらいいかがわからないタイプの作品です。
トリュフォー監督が『大人は判ってくれない』で本作のタイトルを出して資金援助をしたり、シャブロル監督製作、ゴダール監督が出演したりでやっと出来上がりました。

リヴェット監督はヒッチコック監督の本で有名になるので、彼の作品、特にマクガフィンを本作でテーマにしています。
これが拡大に解釈されてとんでもない陰謀論の話になっています。
謎の悪い組織がいるようなので、自殺に見せかけて殺しが起きていたりもします。
追いかければ殺される危ういサスペンスになれば、きっとすぐに映画化出来たでしょう。
しかし本作の陰謀論は、わかるかわからないかの微妙な綱渡りをしていきます。
ある演劇団体の演劇の内容の話が現実とごっちゃになっているのではないかという見方も出来ます。
複雑で摩訶不思議な映画です。

微妙な綱渡りで行けば、『アイズワイドシャット』に近い印象を持ちます。
早すぎた映画と言えると思います。
今観た方がリヴェット監督の意図は掴みやすいです。
複雑で摩訶不思議な世界観は、パリという街にぴったりでオープニングの車窓のシーンから心奪われます。
パリが主役な映画ですね。
たむ

たむ