ダイナ

ぼくのエリ 200歳の少女のダイナのネタバレレビュー・内容・結末

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

舞台となるストックホルムの雪景色はとても静謐であり、孤独を共通点として惹かれ合う子供達や吸血鬼という設定、原題や何を信じ何に立ち向かい何を助けるかというメッセージ等寓話の色がとても濃いホラーファンタジー。世界観のノイズにならない程度に過激な表現は真正面から描かれていてとてもよかったです。オスカーとエリの出会いから心と体に傷を負いながらのふれあいを観てからのクライマックスのモールス信号。かりそめのものだとしても2人の気持ちは列車内の時点で幸せに満ちていたと思うと嬉しくなります。

一方的な暴力はさらにうわ回る力で蹂躙するという結末は悲劇的(でもプールから顔出した後エリと笑い合うシーンは好きです)。しかし吸血鬼を人間の価値基準の上に並べることはナンセンスというか、そこを目ざとく指摘すると「いやもう生きるために善悪人関係なく殺人してますから」という部分も直視しないといけない気がするんでノータッチで。過度ないじめのしっぺ返しもまた寓話感があります。やり返されて更生していたら、あそこで兄貴をみんなで精一杯止めにいったら、救いの未来は残されていたりするんじゃないでしょうか。ベンチに座って塞ぎ込んでた男の子は生きてた?引き気味だった子も含めほぼ全滅。いじめは見て見ぬふりするな止めろという教訓を教えてくれる一作。

ぼかし問題と副題のミスリードは普通に引っかかりました。女子ではないというエリの言葉の意としては種族の違いを指しているものかと思いましたが、あのぼかしの裏は女性器でなく去勢跡とのことで…。結果的に性別を超えた異種族間の愛を描いていたということで、作中で乗り越えた壁は思っていたよりもかなり分厚いものだったと。原題の「正しいものを内に入れろ」っていう点も考えて、性別とか種族とか関係ねえんだよ、お前が信じるものを受け入れろ!という喝を入れられたような気になります。
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