いこ

ぼくのエリ 200歳の少女のいこのネタバレレビュー・内容・結末

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

薄ぼんやりと暗く、冷たくも美しい、そんな雰囲気いっぱいの映画。

ハラハラするシーンや切ない気持ちになったりもする決して単調ではないストーリーだが、
それよりも雰囲気が前に出てくる「絵画」を観ていたような印象が残る。

〜以下ストーリー外感想ネタバレ〜
副題の“200歳”が引っかかる。
吸血鬼だということで、寿命が長い、もしくは不老不死である可能性を表しているのだろう。
だけれども、それなら彼女が『パパ』と呼ぶ男性はどんな存在なのか…
画中でのエリがすでに200歳であるなら、彼女が目上の男性として接する彼は単純に考えれば彼女以上の年齢と思われる。
だが、そうなれば彼も人間ではなく吸血鬼ということになってくるのではないか?
だが作中ではエリの為に血を集めてくることはあっても、彼自身が同じように血を求めている様子は全くない。

であれば、彼は彼女よりも若く…それどころか人間であると思われる。
だがそうなればエリとこの男性の関係は何なのだろうか?
彼からみたエリは、人を殺める危険を犯してでも生かしたい存在であること、また一緒に暮らす様子からは敵意を持たない“女の子”であるようだ。
また、エリからみた彼も、自分のことを想ってくれる大切な存在の様だ。
彼が追い詰められ、自傷の末に運び込まれた病院での姿は、自分の娘のため死を決心したようなー吸血鬼となった娘との生活から開放される安堵感の様なものを感じる。
対象に、彼を見送る彼女の姿かは、自分の為に死ぬこととなった父親への申し訳なさ、理解者である家族を失った悲しみ、これからの生活への戸惑いや諦めのようなものが感じられる。
これらの姿から、わたしにはエリと男性は親子なのだろうと思えるのだ。

そうなれば、この副題は画中のエリではなく、その後の彼女を指しているのだろうか?
そうだとすれば、200歳の“恋人”を持つ主人公もそれに近い歳まで生きたということになる。
エリは彼の血を吸い、彼はエリと同じ吸血鬼になったのか?
自分の父親であろう人物は最期のその時まで吸うことはなかったのに?
どうにもそうは考えられない…

…考えれば考えるほど、この副題が安易につけられたもののように思えてくる。
副題に惹かれて観たわけではないけれど、これはなんとも勿体無いことではないだろうか…
いこ

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