Myon

ぼくのエリ 200歳の少女のMyonのネタバレレビュー・内容・結末

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

雪の白、血の赤とプールの青、グロテスクなのに透明感のある描写。主人公たちの設定が哀しいだけに余計際立つ映像美にため息。
エキゾチックで少年的なエリ、北欧人らしさと嫋やかさを持つオスカー…ふたりの対照的な容姿も良い。知らない人に聞いたら後者を吸血鬼だと思っちゃうかも。

ストーリーは瑞々しくも排他的なボーイミーツガール(…)で、斬新というわけではない。が、地の利を完璧に活かした撮影と、演出のうまさが物語を肉厚にしている。何でもないロケーションや人物の言動が絵になって、でも嫌みがない。
傍から見れば状況は悪くなってすらいるのに、エリとオスカーのふたりだけは充たされている、そんな痛々しい余韻のあるラストも好き。

原作を知ったあとは、例のぼかしは当然エリのカストラート設定をわかっていてつけたものだと思っていた。
だが邦題などもおもんみるにまさか気づいていない…?んなアホなと思うし、私自身はエリが「そう」であろうがなかろうが、オスカーの気持ちもふたりの前途も変わらないと思う。だからこの映画に関していえばこれらの処置は敏感な方々への「配慮」として、好意的に受け止めることにする。実際あの世話人がペドフィリアであることなど、明示されないほうが良かったこともあるわけで。

ただ問題を映画業界全体に広げるなら、こういう作り手の意図をぼかすどころか歪曲しかねない事だけはやめて欲しいとも思う。見た人全員が原作や考察サイトをチェックするわけでもなし、こんなことが蔓延っていると思うと安心して映画が見られなくなりそう。

リメイク版も味がありそうなので見てみようかな。
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