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傷物語I 鉄血篇のTTのレビュー・感想・評価

傷物語I 鉄血篇(2016年製作の映画)
3.5
TOHOシネマズのフリーパスポートを手に入れ、せっかくタダなんだから何か観ようと思い、たまたま時間が合ったので鑑賞。もちろん、〈物語〉シリーズなるものも全く知らない状態。

え、何このATG映画みたいなアニメ…。過剰と言わんばかりにモンタージュされるシンメトリックなカットとテロップ。64分の中編ながら、見応えが凄まじかった。

僕が日本のアニメに疎いだけなのか、主人公である男子高校生が学校1の才女のパンチラを目撃したことがきっかけで彼女の友達になる序盤のシーンにおける、童貞みたいな青臭さに面食らった。はっきり言って、「観る映画間違えた」と後悔した。だが、主人公がダルマにされた血まみれ女吸血鬼と出会ってから、徐々に面白さが増してくる。

2人が出会う場所が無人の地下鉄構内という設定も非常に効いている。地下鉄(の駅構内)を舞台にしたホラーの醍醐味といえば、蛍光灯のフラッシュライトに照らされた密室空間で、得体の知れないものと出会う恐怖。『狼男アメリカ』の地下鉄シーンが好例。

本来は闇の中にあるはずなのに、影もできないほどクリアーで明るい空間。階段やエスカレーターなど起伏に富み、モダンなデザインで溢れている。これが画的にカッコイい。そんな真っ白な空間のド真ん中に手足のない血だらけの女という色配置もキマっていて、このシ-クエンスを観ているだけで楽しい。クライブ・パーカーの『ミッドナイト・ミート・トレイン』(またはその映画化作品)や『0:34』あたりが好きな人も気に入るはず。

事程左様に、地下鉄シーンのインパクトだけで合格みたいな映画だし、〈物語〉シリーズを知らない僕でも最後まで面白く観ることができたので良かった。夏に公開される続編が観てみたいと思わせるくらいの訴求力もあったし。個人的には、この画の密度とテンポで2時間やってほしかったけど、本当にATG映画になってしまうから、この尺がちょうどいいのかもしれん。
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