喜連川風連

溺れるナイフの喜連川風連のレビュー・感想・評価

溺れるナイフ(2016年製作の映画)
3.5
「こんな私を好きでいてくれてありがとう」
誰しも抱えていた?憧れの人。
その憧れの人が偶然同じ同士だった人はそれを運命と形容するのだろうか?

その運命を取り巻くように色々な愛が描かれる。
・ストーカーの一方的な愛。
・優しくすることだけしかできないただの良い人の愛。
・菅田将暉と小松菜奈のすれ違い。
それは思春期の破壊と創生の物語であった。

氾濫する少女マンガ原作恋愛青春映画たちの中にあって、一筋の輝きを放つ作品。

山戸結希監督作品。
カット割り・長回しとそうでないシーンの使い分けひとつひとつ練られており、退屈さを感じなかった。
自主映画でカルト的人気を得た監督がこうして評価されることが嬉しい。

そしてなにより小松菜奈を撮らせたら日本一かもしれない。

くちびるの陰影、湿った表情、一番最初期のこの世の光を集めたような表情。

それだけでも一見の価値がある。

だが、マンガ原作ということもあって、唐突に展開するストーリーに荒さがあり、
せっかくの船の上とバイクの上のシーンも後撮りで声を当ててるのが丸わかりで、細部に惜しさがある。

小松菜奈の演技が神がかってるのに対して
ジャニーズの子の平板な演技と甘噛みが少し残念だった。

完全にブレークするには
あとひとつ。
足りない。

思春期の女の子を描かせたら天下一品なだけあって、マンガ原作の監督がふえるかもしれないが、
オリジナル脚本の映画も見たい。

園子温でいう愛のむきだしのような作品が監督に降りてくるか今後とも注視したい。
喜連川風連

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