レネリー

葛城事件のレネリーのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
4.8
Blu-rayにて鑑賞

家族を抑圧し続ける父、思考停止状態の過保護な母、リストラされ孤立状態で自分意識がない長男、引きこもりニートの甘ったれな次男が死刑囚になり、死刑反対活動から獄中結婚をした女を巡って描かれるヒューマンドラマ。
本作は、「土浦連続殺傷事件」「秋葉原通り魔事件」「池袋通り魔殺人事件」などまだそう古くない事件をインスパイアして製作されたサスペンスだ。
本作は実録物犯罪映画に焦点を当てているのではなく、犯人とそれを取り巻く家族がどのようなものだったのか、がメインとなる。

全ての歯車が狂ったのは、父の抑圧し続け絶対的支配下の元で暮らしてきた結果。
と思われがちだが、果たしてそうだろうか?
序盤で描かれるのは刑を宣告されたその後の父と死刑反対活動をする女との会話が描かれているのだが、そこで語られる”日本人は陰湿で何かあれば影で大袈裟に喚き、偽善者ヅラをして騒ぎ、自分の手は汚さず綺麗事ばかり並べそのサマに酔っている。そういうのをオナニーと呼ぶんだよ!”
このシーンでは客観的に見ると自己主張の激しい頭の硬い中年と捉えられるが、俺はこの会話こそ現代社会の姿だと思った。
SNSが盛んな現代、匿名を武器に誹謗中傷を書き込み、陰湿に人を貶めようとする模様が多い。
この映画は犯罪ドラマを趣旨に、現代社会に対する挑発的な社会派ドラマとも言える。

産んだ子が死刑になったから父が悪いのか?確かになんらかの原因があったには違いないがそれはこじつけであり、言い訳に過ぎない。
抑圧され続け…というのは言い訳であり、自分自身の主張がなく思考が停止し、いけない方向へと進む。
自立どころか、働くことさえせず何事にも否定的。こういうタイプの人間の性格は、苦労を知らずその自分を馬鹿にされることを異様に嫌がる傾向があるが、ただの甘えに過ぎない。
死刑囚となった次男を見てると反吐が出そうになる。

狂人な父は、一見すると悪人に見えがちだが、歪んではいるが彼なりの家族愛は感じれる。
本当に必要がなければ居なくなったとしても何も思わないのが人間だ。ただ、愛し方を間違えてしまった。それだけの事。

この映画で最も狂ってるのは死刑反対活動で死刑は人間そのものを否定している絶望を編み出すだけのものと主張する女。

現代に生きる若者、ネットに蔓延る匿名を武器に人の不幸や有る事無い事で騒いでる白蟻みたいに群がる陰湿な人達に一度見て欲しい。

狂人の父が訴える言葉を聞いて、何を思うのか…。

正解なんて存在しないが。
レネリー

レネリー