おばけシューター

葛城事件のおばけシューターのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
4.0
Netflixにあったんだ!
再鑑賞、そしてレビュー書き直しなう。
長いですサーセン。

附属池田小事件を主なモデルにした、死刑囚と家族の話。内容が内容だけにお厳しいおレビューも多いですが、個人的にはかなり傑作だと思う!
演出、演技、人選がエライ!
ガチのゴミ人間って毛量多いがち、服のサイズ合ってないがちだヨネ。監督はクズの事、よくわかってる。

冒頭、刃牙ん家みたいにされた壁にペンキを塗り直す葛城ダディ。判決のカットが挿入されるが、死刑が宣告されると被告が振り向きダディに対してニヤと笑う。
ここに、この作品の全てが集約されているッッ!(板垣風)

出てったママンと次男が暮らすアパートにパピーがカチコミに来るシークエンス、よくよく工夫されてて超うまい!ドアが無遠慮に開けられると同時に通報音のようなヤカンの音が静寂のなか響き緊迫感を加速させ、これまたイヤ〜〜なキレ方をする父親に同調するようにじわじわと部屋が暗くなる。
そして最後は、牧歌的な音楽と「とにかくウチに帰ろう」ってセリフ、ここだけ切り取れば平和な家庭のストーリーという表現が、却って異常さを引き立てるという見事な演出!

葛城ダディあらため三浦パパのいや〜〜な人格が最初の会話シーンから全開で、「電話がなったら出るという発想が、日本人が矮小たる由縁だよ」←この時点で言いたいことが山ほど出てくる
父親は、明らかに次男を恐れていて、直接叱らずに妻を殴ったり、腫れ物を触るような口調に表れる(彼を可愛がる妻を貶し、抱こうとするのは次男への復讐も兼ねてると思った)

そして次男は最悪な、だがリアルなクズ人間で、こういう一面が自分にもあることを考えずにはいられず、それがまた不快にさせる。(ワタシは人は殺してないですよ)
ただ、池田小事件に限らず何人も殺してるようなニンゲンは、より極端で異常で理解不能な人格だろうと思う。現実の稔みたいな奴は、せいぜいショボい器物破損かネットに爆破予告で書類送検ですな。どうでもいいか。

そんな次男を溺愛する母親も強い実在感で、なんだかすごくよくわかる。一見無害なように見えるのはきっと何もかもに興味がないからだし、楽しそうにしててもそれは楽しそうに振る舞ってるだけ。そして本当は楽しくなんかないことに、本人も気づかないようにしてる。
しかし「本当はわかってる」ことを指摘された時の表情がヤバすぎる!!

長男保の奥さんの演技もすごいっすね。内田慈さん。作中唯一の常識人で被害者。しかしタモっちゃんは、長男に厳しく次男に優しくする妻が、自身の母親と似通ったところがあることに気付いてしまうのであった🥳
「勝手な人たちだなあ…」のニュアンスが特に好き。そんで想像ですが、ラスト付近の実家に戻った彼女のカット、これは後から追加されたんじゃないかなぁ。制作途中であまりに可哀想って事になって、置いてみたんじゃないかと考えた。

例の犯行シークエンス、一瞬エスカレータで降りてる人の視点になるのは「あなたが見てしまったらどうする?」という問いかけだよね。犯行後、それを改めるかのように、呆然と立ち尽くす彼を殺人犯がじっと見つめる。(そして彼は、時間を考えると明らかに距離を空けてついてきていた!きっとワタシもそうするだろう)
BGMもなく、誰もが聞き慣れた改札の音だけが鳴り響くのが更にリアリティを強める。

ところで、、映画に限らず、人を人たらしめるように描くには三大欲求を満たしてるところを描くのがコツだそうですね。キャラクターを眠らせ、セックスさせ、そして食事をさせる。作中幾度か出てくる食事シーンは、どれも徹底して美味しく無さそうに写している。
これが薄暗い人間らを描く事に寄与してるのは、想像に難くないでしょう!