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イーハトーブ幻想~KENjIの春のmitakosamaのレビュー・感想・評価

3.9
テレビ岩手主導でグループタックが制作をしたとの事。これが中々の傑作だ。やはり河森正治を監督としたことが成功だと思う。可変メカの印象の強い河森だが、アルジェナなどに代表されるように、実は案外と観念的な映像にとても優れた映像作家なのだ。今作でもその才能が遺憾なく発揮されている。

賢治誕生100周年とのことで、賢治の自伝的な物語をイーハトーブの世界観に当てはめてなぞっている。
キャラクターは銀河鉄道の夜の夜と同じくますむらひろしだが、ますむらキャラからはだいぶアレンジが施されてるね。顔は猫だが頭身がデフォルメされていなく人間のシルエットをしてる。
人間のように行動するが、親子で言い争っているシーンなんかでは猫のようにフーシャーと威嚇しながら怒っているなど、センスオブワンダーを感じる。

小学校の教師だった賢治。村の子どもたちの東北弁がリアル。不思議な物言いで生徒から慕われているが、農村の現実を鑑みて、文学者となるべく上京。
質屋の父親との確執。旧友との離別。農業に従事するも不作や盗難といった挫折を味わう。
慕ってくれる子どもたちとの交流が描かれ、生死の境に賢治が見たものは…

猫キャラではありながらファンタジーに振ることをせず、むしろスゴい地に足がついた世界観だ。それが農村主義を貫いた賢治の生涯を表すのに見事にマッチしている。
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