shunsuke

騎兵隊のshunsukeのネタバレレビュー・内容・結末

騎兵隊(1959年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

・黒色が画面を彩っている。
冒頭の作戦室のわずかな光による人物の影、コンスタンス・タワーズの屋敷の中のろうそくによる人・物の影、あるいはジョン・ウェインの隊が野営した時の焚き火の炎により出来る影、足を負傷した兵士の足を切り落とそうとする際の小屋の中に出来ている影など。人物の顔がそれによってつぶれていない(むしろ際立っている)。
終盤、橋での決戦前でコンスタンス・タワーズにジョン・ウェインの影が覆い被さるところから始まるショットがある。その後ジョン・ウェインが彼女に詫びるが、彼の気持ちが彼女に寄り添っていることを示す重要なショットになっている。
コンスタンス・タワーズの顔に影が落ちる重要なショットはもう一つあって、それは彼女が北軍の騎兵隊を屋敷に招き入れようとする際のものだろう。わずかに顔に影がかかっている。影は陰謀を示すため。ウィリアム・ホールデンだけがそれを見抜いている。
この映画にとって影は単なる影ではなく、映画的事物として重要な役割を担っていると言える。

・画面の手前・奥行きの利用、あるいは画面内と画面外の関係におけるアクションが豊富。例えば、最初のころのシーンでジョン・ウェインの隊の斥候が相手に襲われるショットなどは、画面奥の左(ほとんど画面外)から敵が襲撃すると同時に手前右からも敵がひょっこり姿を現し彼らを攻撃する。ジョン・フォードはこれらを当たり前であるかのようにカットを割らずにワンショットで撮ってみせる。一つの画面内で複雑なモンタージュが行われている。
他の例で言えば、「バーのグラスが外で起こっている爆発で倒れる」「コンスタンス・タワーズが屋敷の食卓の周りを、つまりフレーム内外を動き回ることでカメラの位置が変わっていく」「何度も描かれる騎兵隊の行進の方向(ひたすら歩く映画)」など。

・ウィリアム・ホールデンがコンスタンス・タワーズを「盗み見る」。理由は彼が軍医だから。軍医だからこそ屋敷で会議を外された彼はタワーズの盗聴を盗み見ることができ、軍医だからこそ去って行くジョン・ウェインを見つめ続ける彼女の後ろ姿を、負傷兵のいる小屋の傍から盗み見ることが出来る。盗み見てそのままだと辛いから、ホールデンはタワーズを騎兵隊に突き出し、またタワーズに寄り添う。「見ること」は「突き放すこと」であり、「見ること」は「近づくこと」である。

・コンスタンス・タワーズの青色のスカーフがジョン・ウェインに。そのウェインが去って行く様子をピンク色の前掛けをかけたタワーズがいつまでも見送る。もう会えないかのように。それでもどこかで繋がっているかのように。

・コンスタンス・タワーズが屋敷で騎兵隊一行をもてなす際に鶏の胸肉を勧めながらカメラがタワーズの大きな胸を映すシーンには笑った。こんなしょうもないけど可笑しいギャグをさっと挿入出来るあたりが流石と思う。

・画面内に動きが起こってそこから一連のアクションに繋がっていくショットが多い。士官学校の生徒が戦場へ駆り出される時に一人だけ親に連れられるけれど、その後その生徒が逃げ出して自ら戦場へ赴くショットで、まずこの少年が持っていた太鼓が画面手前から奥に向かって草原の上を転がっていき、見ている方は何だと思っていると後から逃げ出していった少年が転がる太鼓を追いかけていき、親が少年を止めようと大声をあげるという風に繋がって行く。
コンスタンス・タワーズが橋での決戦の際に銃声に慄き、ジョン・ウェインに飛びつくところも、その飛びつくアクションを逃さずショットを始めている。
騎兵隊が敵に挟まれて沼地から抜けようとする時なんかも、ショットの初めは馬が水に入っていき水しぶきがあがる大胆な動きから始まる。
画面内で物が人物が動物が躍動している。
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