カルダモン

ひつじ村の兄弟のカルダモンのレビュー・感想・評価

ひつじ村の兄弟(2015年製作の映画)
3.4
アイスランドの牧羊地。何もない広大な山岳地帯にポツンポツンと暮らす羊飼い達の村。この映画の登場人物達はリアルに牧羊家なのだろうか。羊を扱う様がどう見ても演技ではなく自然と身についた所作だった。

グミーとキディーの老人兄弟は40年間絶縁関係のまま、しかしお互いにこの村を出ることなく隣同士の家に住み、羊飼いとして生計を立てている。ある時、コンテストに出した羊の一頭が感染症に罹っていることが発覚し、村は騒然。村の羊全てを殺処分しなければならない事態へと発展してしまい、兄弟間の溝はより深いものに、、、、なるかと思いきや。

羊毛のようなヒゲモジャ爺さん、どっちがグミーでどっちがキディーが時々わからない。羊がいなければ羊飼いは死んでいるも同然だと劇中のセリフで語られるけれど、それはおそらく本当で、羊によって人が生きているのだということが言葉ではない土地の説得力から伝わってくる。寄り添って、塊になって、厳しい自然の中で暖め合って生きていく。離れ離れになってしまった兄弟が、前の見えない吹雪の中で羊の群と渾然一体になっていた。