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ひつじ村の兄弟のhasseのネタバレレビュー・内容・結末

ひつじ村の兄弟(2015年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

演出4
演技3
脚本4
撮影3
音楽4
技術4
好み4
インスピレーション3

『LAMB』とは、アイスランド×羊×カンヌある視点部門出品という共通点があり、続けて見てみた。こちらはある視点部門でグランプリを受賞している。

牧羊産業で成り立っている村でスクレイピーという羊の伝染病が発生し、一斉殺処分が言い渡される。40年も互いに口を聞いていない兄弟の関係に徐々に変化が…という話。

弟がこっそり羊を数頭匿っていて、兄が「お前だけずるい、獣医にチクってやる!」ではなく、拒否してきた小屋の清掃に手をつけたのは、弟も自分と同じように、由緒正しい血統を絶やしたくないという思い、羊たちを何とか守りたいという思いを持っていることが、心の琴線に触れたからだろう。それをきっかけに、兄弟は羊を殺処分から守るために共働していく。

殺処分が決まったあと、兄弟の和解の物語にいく前に、弟が羊たちをいかに隠しとおせるか?というサスペンスが始まり、それがベタな家族の絆モノな陥ることを防いでいてよい。また、兄弟の和解も、お涙頂戴のセリフやエピソードはなく、ただただ獣医から羊たちを守るという共通の目的で二人三脚を組む感じが好き。VSフリーザのために共闘する悟空とベジータの図です。ラスト、兄が弟を裸同士で抱いて暖めるショットは(ストーリーの必然はあるとはいえ)インパクト強くてびっくりしたが。笑

兄弟のその後は描かれないが、おそらく吹雪で羊と牧羊犬を失い、裸一貫になってしまうが、これからは力を合わせて新しい羊を買って育てていこう、となるのではなかろうか。それを書かないのが、ウェットな展開を省くスタンスが徹底されていてよい。

羊が一斉処分され、他の牧羊農家たちは転職、移住を考え出している。兄弟は残るだろうが、子供はなく、老い先は短い。羊とともに歩んできたこの村の歴史も、終焉が近いのか、はたまたここから少しずつ再生していくのか。
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