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カンパイ!世界が恋する日本酒の小のレビュー・感想・評価

3.6
日本酒が飲みたくなるドキュメンタリー映画。岩手「南部美人」の五代目蔵元、外国人初の杜氏のイギリス人、虜になった日本酒の魅力を世界に発信し続けるアメリカ人ジャーナリストの3人に密着。彼らの日本酒へのかかわりや熱い想いがテンポよく伝えられる。

幼い頃から跡取りになるのが当然と見られていたことで自らの中に生じた“縛り”を解き放ちたいという気持ちが原動力の五代目蔵元。日本酒から逃れようとしたけど、アメリカでのホームステイ、教職に就く可能性も考えて進学した大学での生活を通じて、日本酒に戻ってくる。

しかし、蔵元として後を継いでからも、不可侵だった杜氏の世界に飛び込んだり、セールスへ海外に飛び出したり、自由を求める想いは変わらない。

イギリス人杜氏は、清酒酵母をはじめとして、目に見えない醸造の要素を操るため経験を積み重ね、カンを磨く、杜氏という職人の世界が肌にあったように感じる。彼はマニュアルのない「毎年1年生」の世界にのめり込んでいる。

日本酒市場の低迷、杜氏の高齢化で廃業を考えた木下酒造が、このイギリス人杜氏に起死回生を託す。彼は次々と新製品を投入して、見事に酒蔵を立て直す。彼は“大和魂”を持つイギリス人だ。

日本酒に魅せられた瞬間を一番はっきり語るのがアメリカ人ジャーナリスト。彼は、はじめ居酒屋で安い日本酒を飲み、特別な印象を持っていなかったが、当時働いていた職場の同僚に招かれ日本酒の飲み比べをすると、世界が変わった。

それからは日本酒が好きというだけだったが、ある日ひょんなことからジャパンタイムスの編集者と花見の席で一緒になり、日本酒の想いを熱く語ると、記事を書いてくれ、と。記事は好評で、書籍化。今や国内外で日本酒のワークショップを開催する「日本酒伝道師」だ。

何がきっかけになるのかわからない人生の面白さも感じる映画。誰が言ったか忘れたけど「温度で遊ぶ日本酒。これを知ったらワインは物足りない」。観終わった後はお店にGO!です。日本酒がいつもより味わい深く感じるかも。
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