スローモーション男

ビースト・オブ・ノー・ネーションのスローモーション男のレビュー・感想・評価

4.5
 大傑作

アフリカの架空の国を舞台に、反乱軍に家族を殺された孤児の少年アグーが、子供たちだらけの殺人部隊に率いられ少年兵へと仕立て上げられていく物語。

恐ろしい。架空の国の話でフィクションだが、異常なほどリアルに描いている。
たくに虐殺シーンはショッキング。
その通り、実際に世界にはおよそ25万人の少年兵がいると言われている。彼らは小学生ぐらいでも銃を持ち、人を殺していく。それをすべて描いている。

少年アグーはもともといたずらっ子だったが、部隊の厳しいスパルタ教育のなかで感情を失っていく。
その目は老人のようだ。

子供たちが戦争の犠牲となる映画は多々あるが、加害者になることは描いてこなかったと思う。この作品の狂気は画面上から伝わってくる。
イドリスエルバがカリスマ性のあるリーダーで、アグーに色々教えるが…。
殺人が通過儀礼という恐ろしさ、途中からアグーが殺しを何とも思わなくなる姿が強烈である。

カット割りが全体的に短いが、何ヵ所かものすごい長回しを行い緊張感を出している。

ラストシーンで戦争から解放されたアグー。しかし傷は忘れない。老人になってしまった彼が少年に若返る日は長いであろう。

「007 ノータイムトゥーダイ」で監督をしたキャリージョージフクナガがメガホンを取った。彼の映画作りに驚愕を感じた作品である。