花波

ビースト・オブ・ノー・ネーションの花波のレビュー・感想・評価

2.5

″ 戦いを辞めたければ死ぬしかない ″
少年は思う。もう子どもには戻れないと。


舞台は内戦中のアフリカのとある国。″ 中立地帯 ″の平和な村で友達や家族と幸せに生きていた少年アグーが、突如として紛争に巻き込まれ、少年兵へと変貌していく様を描く。


幸せに生きる少年の世界が一変した日。そこからの展開は余りにも悲しく、惨たらしい。この作品には救いなんてない。息が詰まるほどに。家族を殺された少年たちが、別の村を襲い、人を殺す。生きる為にその環境に身を置き、順応するしかなかった彼らは、そんな自分を悪魔だと思うようにさえなる。

序盤では笑顔が眩しい無邪気な少年、物語が進むに連れて彼の表情は少しずつ無くなって、やがて全てを悟ってしまった、もう少年とは呼べない、けれど大人にもなれない別の何か、まさしく悪魔や野獣のようなものへと変わっていく。


この作品は史実でも無ければ、架空の国の架空の話だ。けれどこれは現実に限りなく近いと、わたしは思う。こんな風にしか生きられない少年たちにも確かに未来があることを、頭を殴られるような衝撃で痛烈に訴えられる。どうすればいい?どこに救いがある?この作品のような悲惨な出来事は、この世界のどこかで今も起こっているのだ、間違いなく。


自分を悪魔だと思う少年は言う。僕はただ、幸せになりたいんだと。
花波

花波