Masato

ビースト・オブ・ノー・ネーションのMasatoのレビュー・感想・評価

4.3
軍隊により避難地は襲われ、唯一生き残った少年アグーは、武装集団に偶然出会い、兵士として鍛え上げられていく

うわぁ…凄い映画…

戦わずいられるには、死ぬしかない。

無垢な少年が、戦争を体験し徐々に子供心と理性が蝕まれていく姿が描かれている。
終始救いがない。

戦争映画で常に視点にあるのは大人の視点だ。
「ディアハンター」、「アメリカンスナイパー」
だが、この映画は少年の視点から描かれている。
幼い心は侵食されやすいから、無垢な心が段々失われていく過程が見てて分かりやすい。

安心について
というスヌーピーの原作者シュルツの体験の評論を授業でやったのだが、これがまさにそう。

「安心とは、車の後ろの座席で安心して寝れることだ。運転している大人は、すべてを任せられているからだ。
だが、突然大人になり、その安心は二度と味わえなくなる。」

シュルツは、平和に暮らしていた日々が母の死と戦争体験により突然壊れていき、突然もう子どもとしては生きていけなくなる日が来ることをピーナッツに織り込んでいた。

この映画では、家族と幸せに暮らし平和な日々を送っていた少年アグーが、突然襲ってきた軍隊と、武装集団に兵士として鍛えられて内戦へと参加したことにより、平和な日々と心が壊され、もう子どもには戻れなくなったことを伝えている。

ー 希望は持たぬことだ。心が壊れたら、残るのは狂気のみだ ー
マックス・ロカタンスキー

主人公のアグーは、復讐という自分の使命を希望とし、必死に生きていくが、こんな世界では希望は心の壊れる材料であって、残ったのはPTSDという狂気だ。

最近の戦争映画で気付いたのは、死ぬことが幸せなこと。


戦争を経験したことで心が変化してしまうというのは、第二次世界大戦,ベトナム戦争,イラク戦争,アフガン紛争などの多岐にわたる惨事によってアメリカでよく描かれてきたが、この映画は子どもが巻き込まれるということで、特に心に強く響く。

主人公の男の子と、イドリスエルバ、ストライカー役の子が特に演技が素晴らしい。
Masato

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