つるみん

ビースト・オブ・ノー・ネーションのつるみんのレビュー・感想・評価

3.8
子供が当たり前のように銃を持ち、人を殺すといった点からすると本作は〝シティオブゴッド〟以来の衝撃的な映画ではないでしょうか。

避難地が襲われ、母親と引き離され、父親兄弟も巻き添えになる。唯一生き残った少年アグーは、武装集団に偶然出会い、兵士として鍛え上げられていくのだが…。

純粋無垢な少年が戦争を前にし徐々に自尊心を失い、理性が蝕まれていく。たとえ子供であろうと状況によってこんなにも人は簡単に豹変してしまうものなのだと言うのが分かる。
少年アグーを含め10代〜20代の若者が何故戦っているのかも分からず銃を持ち、指揮官の指示に従う。
その指揮官を演じたのがイドリス・エルバ。彼はこんな作品にも出演しているのかと感心した。とにかく彼のキャラクターが脅威。時には儀式を行い、時には歌を歌う。何故戦っているのか分からない子供達を洗脳していく。そんな彼自身が制御のつかぬ心の持ち主となっているのだ。

本作は真っ向勝負をしていると感じた。
子供が人を殺すシーンをしっかり映す。逃げたりしない。そんな衝撃的なシーンに加え、斬新なカット割りもスピード感が出ていて良い。特に麻薬を吸った後に戦場が辺り一面ピンク色に変わるシーンは驚いた。戦場にも関わらず、色鮮やかに描かれているのは結構珍しいと思う。

前半から中盤にかけて完璧に近い作品だったが後半につれ失速する感は否めない。あれだけ衝撃的なシーンが目に焼き付いているのだから最後まで突っ走ってもらいたかったのが正直なところ。ただ作品として上手く纏めた感じは良かったのかもしれない。僕はあまり好きではなかったが…。

あとアフリカ内戦の悲惨さというのは伝わるがもう少し戦争についての情報を我々に教えてくれても良かったのではないかと思う。あまりに大雑把な設定で100%入り込むことが出来なかったのが悔しい。勿論フィクションというのは分かっているのだが…。

ただ子供の視点から描く戦争映画というのは珍しく、何なら多少ズレるが反戦映画として〝禁じられた遊び〟くらいしか観たことがない。
その純粋無垢なフィルターを通して映し出させる血の色に絶望を感じる。
つるみん

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