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ビースト・オブ・ノー・ネーションのgのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

エグくてリアルな少年兵の話。
少年兵って題材は小学生のときに社会の自由課題かなんかで詳しく色々調べた記憶がある。

子供の目線で語られていくから、こんな捉え方はよくないけど少年漫画的。
それがこの物語の中盤までを成長物語に感じさせ、後半の崩壊をより無力で遣る瀬無い感情にさせてくる。
主人公のアグー自身、ピュアに染まっていきつつも「この大人は信じていいのか」っていう鋭敏な客観性もあって、全体像を俯瞰できるような感じがした。

戦争という無益で悲惨で残酷なものに否応なく巻き込まれ、そんな状況を悲観しながらも逃げ出せない、おかしいとわかっていながら何も考えないよう務め、ただ母親の影を探して、母親に心の中で語りかけながら生き抜いていく悲痛さが
詩的なモノローグで語られていく。
映像にも現れている、醜い人間の争いと対比する美しい自然。そんな自然を羨んだり憎んだりするような言葉とか、
こんな悲惨で凄惨な状況下で幼いアグーが語る言葉が悲しいけど美しくて、素晴らしかった。
戦争という、考えることを許されない状況下で、子供は純粋に何を感じて、何を願うのか、内面に深く入っていけるような体験ができた。
アグーが村を襲われ、逃げる序盤にも敵の中に少年兵はいるんだよねー
機械的に命令に従い銃を向け人を殺す、感情がないように見える彼らに、知らぬ間にアグーがなっているっていう振りの置き方もさりげないけど象徴的。

ドラッグでごまかし、音楽で高揚させ、家族だ家族だと結束感を強くさせて戦わせる
出会ってから中盤までの指揮官のカリスマ感はなかなかで、説得力があった。

それと中盤〜後半の兵士になってからは一切出てこないけども、序盤の短い時間の中でも温かい家族や平和の印象が強い。
モノローグの力もある。優しい父や、ちょっと面白い兄の紹介の仕方とか、コメディとかホームドラマ系の紹介の仕方だもん
だからこそ、離れてもそれを求める切なさに感情移入できるし、父、兄が瞬殺されるときのむごさも際立つ。
主人公にとって、戦争は敵を殺すのと同様に、自分の中の感情や善悪の意識を殺すことになっていく。
機械的に死が描かれ、人が画面奥で殺されるのを見ながら笑えるようになっていく。
あと、ドラッグきまった状態で戦場に出て、映像のなかですべてが赤く染まって見えるシーンは一番印象的で鮮烈。

終わり方も印象的で
最後は死ぬのかな、と思ったけど
子供には確かに未来がある。
人をたくさん殺して、仲間や家族が死んでいく記憶を一生胸にかかえながら生きていくことは、戦争の中で死ぬことよりももしかしたら辛いことなのかもしれない

この映画の中での女性の扱いは、アグーの精神にものすごい影響を与えると思う
レイプされたり、男を慰める物として扱われるか
母親のような圧倒的に優しく守ってくれる神に代わる存在
そのどちらかとしてしか女性を知らないから
最後のシーンにもあるように、女性は戦争を知らない、という意識もずっとあるわけだし。

なんにせよ、一見爽やかに終わるラストシーン、その先をいくらでも想像させてくる。
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